ABTCカードとは?メリット・申請要件・取得方法を行政書士が徹底解説


はじめに

「海外出張のたびに入国審査で1時間以上並んでいる…」

そのような声を多く聞きます。実は、この負担を大幅に軽減できるのが ABTCカード(APECビジネストラベルカード)です。

ABTCカードがあれば、アジア太平洋地域の主要国で 優先レーンを利用してスムーズに出入国でき、商談会議に余裕をもって臨むことが可能になります。


この記事を書いた人

よしもと国際行政書士・社会保険労務士事務所 代表

行政書士・社会保険労務士

吉本 祐樹(Yuki Yoshimoto)


この記事では、ABTCカードの 仕組み・取得の流れ・利用できる範囲 を、行政書士として実務経験を踏まえて解説します。

ABTCカード(APECビジネストラベルカード)とは

ABTCカード(APEC Business Travel Card) は、APEC加盟国・地域間の短期商用活動を円滑化するための制度です。

アジア太平洋経済協力(APEC)参加国・地域が導入する共通トラベルカードで、頻繁に出張するビジネス関係者を対象に発行されます。

このカードを所持していると、対象国で入出国審査の専用レーンを利用できるほか、事前承認済みの国では短期商用ビザが不要になるなどのメリットがあります。

一言でいえば、1枚で複数のAPEC加盟国へのビジネス渡航がしやすくなる特別カードです。
(参考:外務省ホームページ)

主なポイント】

利用範囲:APEC加盟国・地域のうち、事前承認を得た国で利用可能

交付機関:外務省

有効期間:5年間

ABTCカードの対象国・地域一覧(2025年版)

以下は、ABTC制度の 完全参加国過渡的参加国(制限付き参加国) の一覧です。

区分国・地域(APEC経済体)
完全参加国オーストラリア、ブルネイ、チリ、中国、本土、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、台湾(Chinese Taipei)、タイ、ベトナム
過渡的参加国カナダ、アメリカ合衆国

【補足説明】

・過渡的参加国(カナダ・アメリカ)は、ABTC 所持者であっても 通常の入国手続き(ビザ等)が必要な場合があります。

・ABTC の裏面には、事前承認を得た国 が記載され、実際に渡航できる国はこれによって決まります

ABTCカードのメリット

ABTCカードを持つことで、次のようなメリットがあります。

入国審査で専用レーン利用可能

・ビザ免除または手続き簡略化

複数国への出張に対応できる

時間短縮による業務効率化

👉 アジア圏への海外出張が多い会社員や個人事業主にとって、時間とコストの削減につながります。

ABTCカードでできること/できないこと

✅ ABTCカードでできること(認められる活動)

・商談・打合せ・契約交渉

・展示会等への参加

・会議・セミナー・シンポジウムへの出席

・取引先や現地法人の視察・調査

❌ ABTCカードでできないこと(対象外)

・雇用契約による現地での就労

・長期駐在や現地採用勤務

・学業(留学)

・観光・私的旅行

・永住・定住目的の滞在

👉 短期商用活動はOK、就労や長期滞在は不可 と覚えておくとわかりやすいです。

ABTCカードを申請できる人

ABTCカード(APECビジネストラベルカード)は、誰でも申請できるわけではありません。

「業務上の必要性」が客観的に認められること が前提条件です。以下では、日本人が申請できる主な要件を外務省の案内をもとに整理します。

ABTCカードの申請要件

有効な日本国旅券を所持していること

・申請書・提出書類に虚偽の記載がないこと

重大な犯罪歴がないこと

外務大臣告示で定める条件のいずれかに該当すること

外務大臣告示で定める条件

以下のいずれかに該当する方が対象となります。

区分詳細
① ABAC関係者APECビジネス諮問委員会(ABAC)の日本委員、日本代理委員、またはその補佐業務に従事する方
② 貿易・投資実績のある企業関係者過去1年または直近決算期に海外との貿易取引・投資実績がある企業の経営者、またはその企業に雇用され業務上渡航が必要と認められる方
③ 経済団体関係者経団連、日本商工会議所、経済同友会、関西経済連合会等の団体職員や会員企業の関係者で、貿易等の業務で渡航が必要とされる方
④ 災害復興関連事業関係者貿易等事業のうち、特に災害復興に資する活動を目的として渡航し、今後も継続的に渡航予定がある方
⑤ 税関長が承認する貿易関連事業者税関長から承認・認定を受けた貿易関連事業者で、今後も継続的に渡航予定がある方

ABTCカードの有効期間と費用

有効期間:原則5年間(ただし、旅券の残存期間が5年未満の場合は旅券の有効期限まで)

申請費用:収入印紙 13,000円分(新規交付の場合)

利用できる範囲

・ABTCカードは、APEC加盟国・地域のうち、事前承認(プリクリアランス)を得た国で有効です。

・承認国では、短期商用活動(商談、打合せ、調査、展示会参加等) に限って優遇措置を受けられます。

就労や長期駐在、観光目的では利用できません。

ABTCカード申請に必要な書類(一例)

・顔写真(データ)

・パスポート写し

・在職証明書

・業務内容を示す資料

・貿易・投資実績を示す資料

※ 詳細は外務省の案内に従って準備が必要です。

ABTCカード申請の流れと注意点

①必要書類を準備
  ⇩
②外務省に申請
  ⇩
③外務省による審査・各APEC加盟国での審査
  ⇩
④承認後、カード交付

日本の外務省での審査には概ね約2か月かかり、ここで承認されると、各参加国による審査・承認手続きに進みます。最終的に全参加国の結果が出るまでには、合計で約6か月程度を要することがあります。

ABTCカード申請時に、優先的に審査してほしい国を指定できます。頻繁に入国する予定の国を記載しておくと、その国の審査が比較的早く進む可能性があります。

すべての参加国の承認を待つ必要はありません。 希望する国の承認が下りていれば、その国についてはABTCカードを先行して利用可能です(他国の承認は後から順次追加)。

※審査期間はあくまで目安で、時期・国・書類の精度によって前後します。

よくある質問(FAQ)

Q. 一般社員も申請できますか?

A. はい。役員や幹部だけでなく、業務上の必要性がある一般社員も対象となります。

Q. 就労ビザの代わりになりますか?

A. なりません。ABTCカードは短期商用活動に限定され、就労や長期滞在は認められません。

まとめ

ABTCカードは、海外出張が多い企業や個人事業主にとって、時間短縮・業務効率化を実現する便利な制度です。
ただし「短期商用活動」に限定される点には注意が必要です。

自力申請も可能ですが、書類不備等の理由で交付が遅れるリスクがあります。

当事務所による申請サポートでは、要件・書類チェック、書類収取代行、審査状況フォロー、問い合わせ対応、補足資料作成などを行うことで、交付までの遅れを抑え、安心して申請できる体制を提供しています。

👉 申請方法や必要書類の詳細、申請代行サービスについては こちらのページ(ABTCカード申請代行サービス) をご覧ください。

関連記事

ABTCカードとは?メリット・申請要件・取得方法を行政書士が徹底解説

日本編|関西国際空港(KIX)でのABTCカード利用レポート

タイ・バンコク編|スワンナプーム空港でのABTCカード利用体験レポート

マレーシア編|クアラルンプール国際空港(KLIA1)でのABTCカード利用レポート

マレーシア編|クアラルンプール国際空港(KLIA2)でのABTCカード利用レポート

台湾・高雄国際空港でのABTCカード利用レポート【入国・出国完全版】