はじめに
ABTC(APECビジネス・トラベル・カード)の申請を検討しているの方から、次のような質問をいただくことがあります。
商工会議所に加入してないけど、ABTCカードって取れる?
商工会議所に加入しているとABTC申請が楽になるの?
審査が早くなる、許可されやすくなるって聞いたけど本当?
結論から言うと、商工会議所加入はABTC申請の必須条件ではありません。
しかし実務上は、事業活動の実態の説明がしやすくなることで、収集する書類が少なくなり、結果として申請準備がスムーズに進むケースがあります。

【この記事を書いた人】
よしもと国際行政書士・社会保険労務士事務所
行政書士・社会保険労務士
吉本 祐樹(Yuki Yoshimoto)
本記事では、その理由を行政書士の視点から分かりやすく解説します。
ABTCカードとは
ABTCカードは、APEC参加国・地域へのビジネス渡航を円滑にするためのカードです。
主な目的は、国際的なビジネス活動を行う人の移動をスムーズにすることにあります。
※制度全体の解説はこちら → ABTCカードとは?メリット・申請要件・取得方法を行政書士が徹底解説
商工会議所加入は必須条件ではない
この記事における商工会議所とは、日本商工会議所(東京、大阪、名古屋など各地域の商工会議所に所属している場合)に加入している場合のことをいいます。
注意:地区の商工会は含まれませんので、ご注意ください。
ABTC申請における対象となる商工会議所は、下記の日本商工会議所のサイトでご確認いただけます。https://www.jcci.or.jp/ccisearch/?page=cciList
まず重要な点として、商工会議所への加入はABTC申請の要件ではありません。
未加入でも申請は可能です。
ただし、未加入の場合は企業活動を具体的に説明する必要があるため、追加資料の収集・提出が必要になることが多いです。
商工会議所加入でABTC申請が楽になる理由
① 企業の事業実態を説明しやすくなる
商工会議所会員であることにより、企業の事業実態を説明しやすくなり、追加で準備する資料が少なく済む場合があります。
商工会議所に加入している場合、企業の継続的な事業活動を説明しやすくなるため、会社の信用性を補足する資料を追加で収集する負担が軽減されます。
② 収集する書類が少なくなる場合がある
ABTC申請では、国際ビジネス活動の必要性を説明する資料が求められることがあります。
商工会議所に所属企業が加入している場合、以下の書類の提出が不要になります。
・登記事項証明書
・貿易・海外投資の実績を示す文書
結果として、申請準備の負担が大幅に軽減されます。
③ 申請準備が早く進む
ここでいう「早い」とは審査が優遇され早くなることではありません。
・収集する書類が少ない
・追加資料要求等の補正が起きにくい
といった理由により、オンライン申請完了までの準備期間が短くなることがあります。
商工会議所加入あり・なしの違い(実務比較)
| 項目 | 商工会議所加入あり | 商工会議所未加入 |
|---|---|---|
| ABTCカードの申請可否 | 可能 | 可能 |
| 補足資料の収集 | 少なく済む場合あり | 追加収集が必要な場合あり |
| 申請準備期間 | 早く進みやすい | 時間がかかる場合あり |
| 審査優遇 | なし | なし |
※個別事情により異なります。
商工会議所と同様に書類の一部免除が受けられる団体
以下の団体に加入している事業所の役員・社員は商工会議所と同様の書類免除を受けることが可能です。
・日本経済団体連合会
・経済同友会
・関西経済連合会
・AEO事業者
※注意:地区の商工会は含まれません
商工会議所に所属する場合の必要書類
・顔写真
・旅券の写し
・在職証明書 ※代表者・役員も必要
・業務内容に関する資料(会社概要や会社パンフレット)
・収入印紙(オンライン申請後発行される手数料納付書と一緒に外務省へ郵送します)
以下の書類が不要になります。
・登記事項証明書
・貿易・海外投資の実績を示す文書
ここで大事なのは、商工会議所加入で会社に関するすべての書類が不要になるわけではないという点です。
申請上つまずきやすい「貿易・海外投資実績の文書」が不要になるのが大きなメリットである一方で、業務内容に関する資料は必要になります。
誤解しやすいポイント:審査が早くなる?許可されやすい?
商工会議所に加入することによって、審査が早くなる、許可されやすくなるわけではありません。
ただし、商工会議所の会員企業に勤務している場合、登記事項証明書および貿易・海外投資の実績を示す文書の提出が免除されます。
その結果、提出書類が減ることで外務省側の確認事項も少なくなり、結果として手続がスムーズに進む可能性はあります。
※審査期間は、申請内容や各国の確認状況等により変動します
海外取引実績が少ない場合はどうなる?
海外取引実績が少ない場合でも、ABTC申請ができないわけではありません。
ABTCの審査は、取引実績の「量」だけで判断されるものではなく、国際的なビジネス活動の必要性や渡航目的との整合性などを踏まえて、総合的に確認されます。
商工会議所の会員企業に所属している場合、海外取引実績に関する資料の提出が免除されます。これにより、海外取引実績の立証に関する負担が軽くなり、申請準備のハードルを下げられる点は大きなメリットです。
ただし、商工会議所加入によって許可が保証されるものではありません。
商工会議所加入を検討してもよいケース
次のような場合、加入によって申請準備が進めやすくなる可能性があります。
・ABTCを初めて申請する企業
・海外取引実績の説明が難しい
・中小企業・スタートアップ
・個人事業主
・今後海外展開を予定している企業
よくある質問(FAQ)
Q. 商工会議所に入っていないとABTCは申請できませんか?
A. いいえ。
加入は必須条件ではありません。
Q. 加入していると審査が早くなりますか?
A. 審査優遇ではありませんが、一部の提出資料が免除されるため、結果としてスムーズな申請を行うことが可能です。
Q. 個人事業主でも関係ありますか?
A. はい。個人事業主でも同様に、提出書類の一部を省略できるというメリットがあります。
まとめ
商工会議所加入はABTC申請の必須条件ではありませんが、
・企業活動実態を説明しやすい
・登記事項証明書および貿易・海外投資の実績を示す文書の提出が免除
・申請準備が早く進む
といった点で、申請上のメリットにつながります。
ABTCカード申請をご検討の方へ
ABTC申請では、企業の状況によって必要資料や立証方法が異なります。
事前に方向性を整理しておくことで、申請準備をスムーズに進めることができます。