日本の外国人労働者数は年々増加し、企業が彼らから給与に関するさまざまな要望を受ける機会も増えています。
中でも、給与の前借りを求められたことがある会社も少なくないのではないでしょうか。
母国の家族への送金、急な出費や帰省など、外国人労働者特有の事情から生じるこれらの要望に対して、企業はどのように対応すべきなのでしょうか。
このブログでは、外国人労働者からの請求に対して、企業が応じる義務の有無を、「前借り」と「非常時払い」とに分けて整理します。
ちなみに、日本人労働者についても基本的には同様の対応を行うことになります。
「給与の前借り」

【前借りには応じる義務なし】企業の裁量による対応が可能
前借りとは?
労働者が個人的な事情(例:母国への送金や生活費の不足など)により、給与の前借りや未来の労働に対する賃金の先払いを希望する場合です。つまり、まだ働いていない未来の労働に対する賃金の先払いを請求するケースです。
この場合、企業には応じる法的義務はありません。
前借りの注意点
あくまで企業判断で要望に応じる場合は、明確な社内ルール(就業規則・労使協定など)を整備して他の社員との公平性を確保することが重要です。
このような特別な対応は、意外とすぐに広まってしまうことが多いです。その場合、同様のケースで同じ対応を取らなかった場合、他の社員から不満が出た、会社への不信感につながります。
「非常時払い」
【非常時払いには応じる義務あり】ただし、支払うのは既往の労働分のみ
非常時払いとは?
非常時払いは、すでに請求している賃金に対応する労働はしており、賃金を請求する権利はあるけれども、賃金の支払い期日が到達していないケースになります。
労働基準法第25条により、以下のような場合には企業は賃金の支払期日前でも支払いに応じる義務があります。この規定の趣旨は、労働者が生活上の緊急事態に直面した際に、次回の給与支払日を待たずに賃金を受け取れるようにすることで、労働者の生活の安定を保護することにあります。
「非常時」とは
・本人や家族の疾病による医療費
・災害による損害(家屋損壊など)
・冠婚葬祭に関する緊急費用
・その他、厚生労働省令で定める非常時
非常時払いの注意点
・支払義務があるのは「既に働いた分」の給与だけ(この場合も、まだ働いていない部分については請求できません)
・非常時の事由は限定的に解釈されるべきであり、単に「お金が必要だから」という理由では非常時払いの対象とはなりません。実務上は、証明書類や状況説明を求めることで、実際に「非常の場合」に該当するかを判断する会社も多いです。
・企業側には、非常時払いの要件を満たす請求があった場合、これに応じる義務があります。拒否した場合、労働基準法違反となる可能性があるため注意が必要です。
まとめ
非常時払いについては、一定の要件を満たす場合、企業には対応する義務があります。一方、一般的な前借りには法的義務はありませんが、外国人労働者特有の事情(送金の必要性や文化的背景など)に配慮した柔軟な対応は、従業員との信頼関係の向上や、会社への定着や愛着につながる可能性が高いです。
ただし、一部の社員にのみ特別な対応を行った場合、その情報が他の社員に伝わることもあり、不公平感や不満が生む恐れがあります。そのため、守秘義務の徹底や一貫した運用方針が求められます。公平性と透明性を確保するためにも、社内規程や運用ガイドラインの整備はしておいた方がよいでしょう。
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