日本は急速な高齢化と人口減少により、多くの産業で深刻な人手不足に直面しています。この課題に対応するため、2019年4月に新たな在留資格「特定技能」が創設されました。この制度は、特定の産業分野における人材確保と、これまでの技能実習制度の課題(技能実習制度は主に開発途上国への技能移転を目的としており、労働者本人のキャリア形成や日本での長期的な就労には制限がありました)を解決することを目的としています。
特定技能制度の開始から約6年が経過した現在、受入れ人数は着実に増加しています。出入国在留管理庁の最新データによると、特定技能外国人の在留者数は約28万人を超え、特に「飲食料品製造業」「工業製品製造業」「介護」「建設業」での受入れが活発です。国籍別ではベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマーからの人材が多数を占めています。
このブログでは、特定技能制度について、基本的な制度の説明から受入れ企業の実務、外国人材の支援方法、特定技能制度の採用コストまで複数回に分けて詳細に解説します。受入れを検討している企業の皆様にとって、この記事が特定技能外国人受け入れの助けとなれば幸いです。
特定技能制度の基本
特定技能には「1号」と「2号」の2種類があります。
特定技能1号
特定技能1号は、即戦力として働くために相当程度の知識や経験を持つ外国人を対象とした在留資格です。
対象分野:16の特定産業分野
技能水準:一定程度の知識または経験を要する業務
在留期間:1年、6か月、または4か月ごとの更新(通算で最長5年まで)
日本語能力:生活や業務に必要な日本語能力が必要、JFT-Basicや日本語能力試験N4以上
※技能実習2号を修了した方は試験免除
家族帯同:原則として認められていません
支援制度:受入れ機関または登録支援機関による支援が必要
特定技能2号
特定技能2号は、熟練した技能を要する業務に従事する外国人材のための在留資格です。
対象分野:現在は建設業、造船・舶用工業を含む11分野
技能水準:高度な専門性・熟練した技能を要する業務
在留期間:3年、1年、または6か月ごとの更新(更新回数に制限なし)
日本語能力:明示的な要件はなし
※ただし、実務上は高い日本語能力が求められる場合があります
家族帯同:条件を満たせば、配偶者や子どもの帯同が可能
支援制度:受入れ機関や登録支援機関による支援の対象外
特定技能1号の対象となる16の特定産業分野
実際に外国人材を受け入れることができる業種と分野は以下のものになります。これら以外の業種と分野の会社では、特定技能外国人を受け入れることはできません。
介護、ビルクリーニング、工業製品製造(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品、製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業
※各分野には、所管省庁が定めた固有の運用方針があり、業務区分や技能試験も異なります。
特定技能2号 対象11分野
ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
受け入れ可能な国
特定技能制度は、基本的に国籍を問わず、一定の条件を満たす外国人材の受け入れを可能としています。ただし、日本と二国間協定(協力覚書、MOC)を締結している国については、特別な手続きや条件が課される場合があります。
二国間協定(協力覚書、MOC)を締結している国は、以下の16ヶ国になります。
フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インド、マレーシア、ラオス、キルギス
特定技能1号になる方法
特定技能1号になるルートは①技能実習2号を満了した場合と、➁技能実習は経験していなくても、技能試験と日本語試験を合格して特定技能になる2つの方法があります。
技能実習2号修了者からの移行
技能実習2号を良好に修了した場合、技能試験・日本語試験が免除され、同一分野であれば特定技能1号に移行可能です。実務経験と日本での生活経験があるため、即戦力として期待できます。
すでに技能実習として雇用している社員を特定技能に資格変更する場合や、他社で技能実習2号を修了予定または終了したものを雇用する場合が該当します。
試験合格による資格取得
特定技能1号においては、特定の産業分野に関する相当程度の知識・経験が求められますので、技能水準と日本語水準を試験等で確認されます。
海外からの直接採用や、留学生の就職などが該当します。
特定技能2号への移行
特定技能2号になるには、特定技能1号から移行するケースが一般的です。その際には各分野での実務経験が必要になります。
特定技能外国人の要件
技能水準(試験の種類と合格基準)
特定技能1号の取得には、各分野で定められた技能試験に合格する必要があります。例えば、以下のような試験が行われています。
介護分野: 介護技能評価試験、建設分野: 建設技能測定試験、飲食料品製造業: 飲食料品製造業技能測定試験、外食業: 外食業技能測定試験
これらの試験は、国内外で実施されており、実技試験と学科試験の両方が課されるケースが多いです。合格基準は分野によって異なりますが、一般的には60〜70%程度の正答率が求められます。
※技能実習2号を良好に修了した場合は、同一分野であれば技能試験が免除されます。
日本語能力要件(試験の種類と合格基準)
特定技能1号の取得には、以下のいずれかの方法で日本語能力を証明する必要があります:
・国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic): 合格点は65%以上
・日本語能力試験(JLPT): N4以上
※技能実習2号を修了している場合は、日本語試験が免除されます
分野によっては、さらに高いレベルの日本語能力が求められる場合があります。例えば、介護分野ではN4合格に加え、介護日本語評価試験の合格が必要です。
年齢・学歴・経験などの要件
特定技能制度には明確な年齢制限は設けられていませんが、18歳以上であることが前提となります。
学歴に関する明示的な要件はありませんが、日本語能力試験や技能試験に合格するための知識や経験が必要です。
また、過去に日本で不法滞在や犯罪歴がある場合は、特定技能の資格が認められません。
健康状態についても、入国前の健康診断で特定の感染症にかかっていないことの証明が必要になります。
まとめ
特定技能制度は、日本の深刻な人手不足を背景に創設された比較的新しい在留資格です。現在16の業種で導入され、特定技能2号も11分野まで拡大されました。技能実習よりも待遇面で優れており、外国人にとっては転職の自由や日本人と同等以上の給与が保証されるというメリットがあります。
特定技能1号では最長5年の在留が可能ですが、特定技能2号に移行することで更新制限なく日本に滞在でき、さらには家族の帯同も可能になります。特定技能2号は将来的に永住権取得へとつながる可能性もあり、長期的なキャリア形成を視野に入れた選択肢となります。
制度は運用開始から数年が経過し、徐々に定着してきていますし、日本政府も特定技能外国人の受入数をここ数年で大幅に増加させることを決定していますので、新たな対象業種の追加やより容易かつ円滑な制度変更も行われることが予想されます。人手不足で外国人材の受入れを検討されている企業様は、出入国在留管理庁のホームページ等で最新の情報を入手しながら、特定技能制度を一つの選択肢としてご検討されることをお勧めします。
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