外国人が日本で特殊な技能を活かして働くための「技能ビザ」(在留資格「技能」)について、申請手続きから審査のポイントまで、行政書士の視点から詳しく解説します。
技能ビザ(在留資格「技能」)とは
在留資格「技能」(通称:技能ビザ)は、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を有する外国人が、日本国内の公私の機関との契約に基づいて技能を要する業務に従事するために設けられた在留資格です。
この技能ビザの最大の特徴は「日本人では代替することが困難な特殊な技能」が求められる点です。単なる労働力としてではなく、長年の実務経験や専門知識に基づく高度な技能を持つ外国人を対象としています。
技能ビザは、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などの他の就労系在留資格と比べて、学歴よりも実務経験が重視される点が特徴的です。大学や専門学校での専攻がなくても、長年の実務経験によって専門性を証明できれば取得可能です。
在留期間は最長5年となっており、一定の条件を満たせば永住ビザへの在留資格変更も可能です。
技能ビザで認められる活動と職種例
①外国料理の調理師

外国料理の調理師は技能ビザの代表的な職種です。特に日本人では習得が難しい本場の味や技術を持つ外国人料理人が対象となります。
対象となる料理の例:タイ料理、イタリア料理、フランス料理、中華料理、インド料理、トルコ料理等
特に重要なのは「本国で培った伝統的な調理技術」を持っていることです。単に母国の料理を作れるというだけでなく、その国の伝統的な調理方法や特殊な技術を習得していることが求められます。
参考事例:日本のタイ料理店がバンコクで10年以上の経験を持つ料理人を招へいしたケースでは、その料理人がタイの有名ホテルのレストランでの勤務経験や、タイ料理の特殊な調理技術に精通していることを証明すること、日本での調理内容やメニューの提出で技能ビザが認められました。
スポーツ指導者

スポーツ指導者(監督やコーチ)も技能ビザの対象となります。
指導者として認められるためには、以下の①または➁の要件が求められます。
①スポーツの指導に関する実務経験が3年以上あること
この期間には、大学等で当該スポーツの指導に関する科目を専攻した期間や、報酬を受けて当該スポーツ選手として活動していた期間も含まれます。
➁オリンピックや世界選手権等の主要な国際的な大会に選手として出場した経験があること。これにより、指導経験が3年未満でも申請が可能となります。
ちなみに、スポーツ選手を呼び寄せる場合の在留資格は「興行」になります。
その他の職種
技能ビザは他にも下記のような特殊な技能職に適用されます。いずれの職種も、日本人では代替困難な特殊な技能を有していることが重要です。
・航空機の操縦者:国際ライセンスと一定時間以上のフライト経験が必要
・貴金属・宝石・毛皮の加工職人:伝統的な技法や特殊な加工技術を持つ職人
・動物の調教師:サーカスやショーなどで活躍する専門的な調教技術を持つ者
・ソムリエ:国際的な資格と実務経験を持つワインの専門家
技能ビザ取得の要件
技能ビザ(在留資格「技能」)を取得するためには、一般的には以下の要件を満たす必要があります。
熟練した技能を有すること
原則として10年以上の実務経験が必要となります。教育機関での専門分野の学習期間も10年の実務経験に含めることができます。
特例として、一定の要件を満たすタイ料理の調理師など一部の職種では5年の実務経験でも可能となる場合があります。
【実務経験の算定のポイント】
・基本的に日本国外での実務経験が対象
・教育機関で当該技術に関する専攻をしていた期間も含めることが可能
・教育期間と実務経験を合算して10年以上となることが必要
日本人の代替困難性
申請者の有する技能が日本では一般的に普及していないことが必要になります。つまり、技能を習得するのに長期間の実務経験や特殊な文化的背景が必要な技能であることが必要です。
例えば、外国料理の調理師であれば、その国の食文化や伝統的な調理法に精通していることを示し、日本人ではその本場の味を再現することが難しいことを説明することになります。
一定の雇用条件であること
締結する契約が、①と②の両方を満たしている必要があります。
①日本の企業・団体との安定した雇用契約があり、雇用先の経営が安定していること
②報酬額が日本人が同様の業務に従事する場合と同等以上であること
一般要件を満たしていること
これらの要件は、在留資格の種類に関わらず共通して求められるものです。
①素行が良好(犯罪歴がないこと)
②入管法や他の法令に違反するおそれがないこと
技能ビザ申請手続きの流れ(海外から呼び寄せるパターン)
技能ビザの申請プロセスは、以下の流れで進みます。申請から許可までに時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールで進めることをお勧めします。
・在留資格認定証明書交付申請
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・日本の受入れ機関(企業)や依頼を受けた行政書士が、入管に申請(申請から許可までは約1〜3か月程度)
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・在留資格認定証明書の交付
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・申請者本人が、在留資格認定証明書を持って本国の日本大使館または総領事館で査証申請(通常1週間程度で発給)
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・査証を取得後、在留資格認定証明書が発行されてから3ヶ月以内に日本に入国
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・入国し、業務開始
必要書類チェックリスト
申請する方の状況や、勤務する企業によって提出する書類が異なります。ここでは、一般的な必要書類をご紹介します。詳細は出入国在留管理庁のホームページをご確認ください。調理師の必要書類、調理師以外の職種の必要書類
申請人(外国人の方)が準備する書類
・在留資格認定証明書交付申請書
・写真(縦4cm×横3cm)
・パスポート
・申請人の履歴書
・技能を証明する書類(例:調理師免許、実務経験証明書など)
・実務経験を証明する書類(例:在職証明書、卒業証明書など)
・その他、出入国在留管理庁が個別に求める書類
雇用主(企業)が準備する書類
・雇用契約書
・会社の登記簿謄本(発行後3か月以内のもの)
・会社の決算報告書(直近1年分)
・会社の事業内容を説明する資料(会社案内やパンフレットなど)
・雇用理由書(なぜ外国人を雇用する必要があるかを説明するため)
・その他、出入国在留管理庁が個別に求める書類
職種別の追加書類
職種によって、追加で必要となる書類があります。その職種特有の技能や実績を証明するために重要です
調理師
メニュー表、店舗の写真、調理技術を示す資料(料理の写真など)、調理師資格証明書等
スポーツ指導者
指導者資格証明書、競技実績や受賞歴を示す資料、指導計画書、所属団体からの推薦状
その他の職種の場合
各職種に応じた技能証明書類、業界団体からの推薦状、作品や実績を示す資料
技能ビザの在留期間
技能ビザの在留期間は、「5年」「3年」「1年」または「3か月」のいずれかになります。
技能ビザの更新
在留期間の満了前に更新申請を行う必要があります。
技能ビザ更新時の主な審査ポイント
・当初の雇用契約に基づいて活動しているか
・技能に見合った報酬を受け取っているか
・納税や社会保険の加入など、法令を遵守しているか素行が良好か(犯罪歴や違反歴がないか)
技能ビザ更新時の主な必要書類
・在留期間更新許可申請書
・写真
・パスポートおよび在留カード
・在職証明書
・雇用契約書(更新されたもの)
・源泉徴収票または課税証明書
・住民税の納税証明書
・雇用先の登記簿謄本(発行後3か月以内のもの)
・雇用先の決算報告書(直近1年分)
技能ビザ更新のタイミング
更新申請は、在留期間満了日の3か月前から行うことができますが、申請のタイミングによっては審査に時間がかかる時期もありますので、早めの申請をお勧めします。
まとめ
技能ビザは、日本人では代替することが困難な特殊な技能を持つ外国人に与えられる在留資格です。申請の際は、実務経験や技能の専門性を十分に証明する書類の準備が必要です。
特に、実務経験証明書や日本人代替困難性の説明には力を入れ、具体的かつ詳細な資料を揃えることがビザ取得の鍵となります。また、雇用条件や雇用先の安定性も重要な審査ポイントですので、適切な報酬設定と安定した雇用・経営環境の整備が必要です。
技能ビザで日本に長期滞在する場合は、在留期間更新時の審査をスムーズに進めるためにも、納税や社会保険加入などの法令遵守を徹底し、日本社会での安定した生活基盤を築くことをお勧めします。そうすれば将来的には永住ビザ取得の可能性も高まってきます。
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