【完全解説】外国人採用の実践マニュアル

はじめに

日本企業の人手不足を補いグローバル競争力を高める上で、外国人材の採用は非常に重要な選択肢の一つとなっています。しかし、単に外国人を採用すればよいわけではありません。最も重要なのは、法令の遵守です。特に、行う業務に対して適切な在留資格を選定してビザ申請を行うこと。

近年の入国管理行政は、形式的な審査から実質的な審査へと大きく変化しています。出入国在留管理庁は、企業が外国人に実際に行わせる業務と申請する在留資格が明確に合致しているかを厳格に審査します。不明確または不正確な業務内容は、ビザ申請を不許可にされる可能性があります。

例えば、ITエンジニアとして採用する場合、単に「プログラミング」と記載するのではなく、具体的な開発言語、担当するシステムの詳細、期待される役割と責任を明確に示す必要があります。同様に、翻訳者であれば、対応する言語、想定される業務範囲や業務量、高度な専門性の根拠を詳細に説明しなければなりません。

この厳格な審査は、日本の労働市場の質を維持し、外国人材の適切な受け入れを担保するためのものです。そのため、企業は外国人材の採用プロセスにおいて、極めて慎重かつ具体的な計画が求められるのです。

本記事では、この複雑な外国人材採用プロセスを7つのステップに分けて、特に業務内容と在留資格の正確な対応に焦点を当てて解説します。

外国人採用における法的リスクと適切な手続きの重要性

外国人材の採用プロセスには、重大な法的リスクが潜んでいます。近年、違法なブローカーや無資格の業者による不正な人材紹介やビザ申請が問題となっており、会社側は極めて慎重に対応する必要があります。

高度な技術的業務を行うとして機械エンジニアの仕事でビザ申請しておきながら、実際に従事させる業務は単純労働させていることがよくあります。このことを知りながら働かせることは資格外活動として不法就労助長罪に当たります。

不正な手続きがもたらすリスク

・不法就労助長罪による企業への刑事責任(最大3年以下の懲役または300万円以下の罰金)

・企業の社会的信用の著しい失墜

・外国人従業員の強制退去

・今後の外国人材採用の事実上の困難

適切な手続きのためのチェックポイント

外国人採用・雇用に関わる業者・専門家の信頼性の確認

・行政書士に依頼する場合は、行政書士証票の提示を求めるか、日本行政書士会連合会のホームページで行政書士登録されているのか確認する

・人材紹介会社から紹介を受ける場合、厚生労働省職業安定局のホームページで職業紹介事業者の資格を有しているか確認する(業者に職業紹介の許可・届出受理番号を確認してみてください)

・過去の実績と評判の調査をする

法令遵守の徹底

・各種申請書類作成方法の理解

・入管法や労働法の理解

Step 1:求める人材像と業務の明確化

外国人材の採用において最初に取り組むべきは、自社が必要とする人材像を明確に定義することです。

業務内容の分析

求める人材像を徹底的に分析し、具体的かつ明確な要件を設定することが重要です。

単なるスキル補完ではなく、企業の長期的な成長に貢献できる人材を見出すプロセスが求められます。

理想的な人材要件の設計

・専門分野における必須資格と経験年数

・技術的スキルの具体的な基準設定

・必要な言語能力(どの程度の日本語能力を求めるのか)

Step 2:適切な在留資格に合わせた求人活動

業務内容に最適な在留資格を選択し、それに基づいた求人手段を展開します。

代表的な在留資格の特徴

①技術・人文知識・国際業務ビザ

・高度の専門性を持つ人材で多くの企業で対応可能

・IT技術者、エンジニア、通訳・翻訳、営業職などの専門職

・大学等で学んだ内容と従事する業務に関連性があることが必要

②特定技能ビザ

・人手不足分野の即戦力人材向け

・介護、建設、農業などの特定16分野

➂技能実習ビザ

・技術移転を目的とした制度

・最長5年間の滞在が可能

・製造業、農業、建設業などで活用

Step 3:人材選定と採用プロセス

最適な人材を見極めるための、様々な求人方法や選考プロセスを設計します。

選考方法の戦略的設計

・外国人人材紹介会社の活用、技能実習の監理団体への相談、自社での求人活動等

・オンライン面接ツールの効果的な活用

・日本語能力の評価

Step 4:労働条件の明確化

法的に適切で明確な労働条件を、詳細に設計し提示します。

労働条件通知書の重要性

労働条件の書面による提示は、外国人材との信頼関係構築の基礎となりますし、法的義務でもあります。単なる形式的な文書ではなく、相互理解を促進するツールとして機能させることが重要です。採用しようとする外国人の母国語を併記してあげると、後々のトラブル防止にもつながります。

労働条件通知書の主な構成要素

・職務内容の詳細な記述(変更の範囲も記載要)

・給与体系の詳細

・勤務時間、勤務場所

・福利厚生の内容

・試用期間の具体的な条件

Step 5:労働契約の締結

労働条件通知にお互いが納得した時点で、次は労働契約を結ぶことになります。労働条件通知書と重複する部分もあります。

労働契約書に盛り込むべき重要事項

・雇用期間の明確な設定

・具体的かつ詳細な業務内容

・報酬の詳細な内訳

・勤務条件の精緻な定義

・機密保持義務の明確な規定

・解雇条件の公正な設定

・福利厚生の詳細な説明

Step 6:在留資格認定証明書交付申請

雇用契約の締結が完了したら、雇用する予定の者が外国にいる場合、日本での就労資格を取得するための在留資格認定証明書交付申請を入管へ行うことになります。

申請から許可が出るまで2~3ヶ月かかりますので、内定を出したらすぐに書類作成に取りかかることをお勧めします。

Step 7:ビザ取得と入国

最終ステップとして、在留資格認定証明書交付申請が許可された場合、発行された在留資格認定証明書を申請者に送り、本国でビザ発給手続きを行い、日本への入国手続きを進めます。

本国での具体的な手続き

①入管から発行された在留資格認定証明書を本国の申請人(これから雇用する者)へ送る

②在留資格認定証明書を持って本国の日本大使館・領事館へ提出し、ビザの発給を受ける

➂ビザ申請を受けた後、3ヶ月以内に日本へ入国する

入国後の重要な手続き

・主要空港から入国した場合は、空港で在留カードを受け取る

・市区町村役場で住民登録を行い、在留カードに住所の記載をしてもらう

・市区町村役場でマイナンバーカードの申請を行う

・銀行口座の開設

・携帯電話やWIFI等の契約等

まとめ

外国人材の採用と日本への呼び寄せにおいては、採用前にしっかりと従事させる業務内容を確定させ、それに対応する在留資格(ビザ)を選択しなければ、絶対に就労ビザは取得できません。

初めて外国人を採用しようとする会社様には、このビザに関する事項や入社までの手続きをすべて自社で行うのはかなり難しいと思いますので、外国人の採用・雇用に慣れるまでは行政書士や信頼できる採用サポート企業に依頼することをお勧めします。