外国人社員のために礼拝所を設置する義務はあるのか?

近年、中小企業でも人材確保の一手段として外国人社員の採用が増加しています。異なる文化や宗教を持つ社員が増える中で、企業は新たな配慮が求められる場面に直面しています。

特に、宗教上の理由から礼拝を行う外国人社員に対して、企業はどのような対応をすべきなのでしょうか?

この記事では、外国人社員のための礼拝所設置について、法的な観点や企業の社会的責任、そして実際の対応方法について解説します。

外国人社員への宗教的配慮の重要性

企業にとって、多様性の尊重は今や不可欠です。特に、外国から来た社員の中には、特定の時間に宗教上の理由から礼拝を行う必要がある人たちがいます。

例えば、イスラム教徒は1日に5回の礼拝を行わなければならないため、勤務時間中に2、3回その時間を確保する必要があります。また、ヒンドゥー教徒やその他の宗教を信仰する者も、礼拝や祈りの時間が必要になることがあります。

このような宗教的ニーズに配慮することは、社員が自分の信仰を大切にしながら働くことができる環境を提供する上で非常に重要なことです。社員満足度や働きやすさを向上させるだけでなく、ダイバーシティ推進の一環としても評価されます。

会社側に特定の宗教を信仰する社員のために礼拝所を設置する義務はあるのか?

では、特定の宗教を信仰する外国人社員のために、会社側に礼拝所を設置する義務はあるのでしょうか?

法律上の結論としては、会社が礼拝所を設置する義務はありません。

​しかし、上記のように多様な宗教的背景を持つ労働者たちが快適に働ける環境を提供することは、企業の社会的責任として重要ですし、彼らの宗教について把握したうえで採用している以上、何ら措置を取らないのは労働者側の理解を得ることは難しいでしょう。

礼拝所設置の問題はどのように対処すればよいか?

では、礼拝所の問題はどのように対処すればよいのでしょうか?

イスラム教の場合について説明しますが、まず、①男女別にお祈りの場所を分け、かつ、➁その場所が清潔である必要があります。

これに関しては、以下のような対応を取られている会社が多いです。

 ①会社の敷地内に専用の礼拝所を新たに建設する

 ②会社の一区画(休憩室や更衣室の一部)を礼拝所にする

 ③一時的に会議室を礼拝所とする

 ④近所の礼拝所がある場合、そこへ行くことを許可する

必ずしも費用をかけて新たに礼拝所を設けなければならないというわけではありません。会社の中の一部を一時的に提供してあげるだけでよいのです。

トラブルを防止するために事前に行っておくこと

宗教がらみの労使トラブルは外国人社員の増加とともに年々増えています。

これを防ぐためにまず必要なのは、「求職者とのコミュニケーション」です。

面接時・採用前に必ず「宗教的に配慮を求める事項はないか」を会社の方から聞いてあげてください。やはり雇う側と雇われる側との力関係の問題で、求職者からすると聞きたくても聞くと採用されないかもしれないという不安がある場合が多いです。

ただし、注意が必要なのは、面接時に「あなたは何の宗教を信仰していますか」とストレートに聞くことは、たとえ本人のためを思ってのことであっても、その意図が理解されないと差別や偏見と受け取られる可能性があるので控えましょう。

会社として宗教的配慮を行うために聞いておきたいという場合は、直接何の宗教を信仰しているのかを聞くのではなく、「会社に対して何らかの宗教的配慮をしてほしいことはありますか?」と間接的に聞くようにしましょう。

それに対してどのような対応が可能か、何が不可能か、ここまでならサポートできる、そしてその際の給与はこうなる、それを一つずつ丁寧に話し合いながら行っていくことが必要です。個々の部分に関しては法律に記載されていないため、労使双方が話し合いで決定する事項になります。このプロセスを省いてしまうと、実際に入社してから問題が露呈してきます。

このプロセスを経て、お互いが納得した時点で内定・雇用契約を結ぶようにしましょう。

まとめ

企業として外国人社員のために礼拝所を設置する義務はありませんが、宗教的なニーズに配慮することは社員の満足度向上や人材の定着率向上に大きく貢献します。

企業は社員一人ひとりの宗教的背景を尊重し、必要に応じて可能な限り配慮できる環境を整えることが求められています。