はじめに
「外国人雇用を行政書士と社労士のどちらに相談すべきか」は、外国人採用を検討する多くの企業が最初に悩むポイントです。
実際に、外国人を雇用することになった企業から、次のようなご相談をよくいただきます。
「外国人を採用することになったのでビザ申請をお願いしたい」
「初めて社員を雇用するので社会保険手続きをお願いしたい」
このとき多くの社長が迷われるのが、
行政書士と社労士、どちらに相談すればよいのか?
という点です。
結論から言うと、外国人雇用ではどちらか一方では不十分になるケースが少なくありません。

【この記事を書いた人】
よしもと国際行政書士・社会保険労務士事務所
行政書士・社会保険労務士
吉本 祐樹(Yuki Yoshimoto)
本記事では、外国人雇用を検討している中小企業の経営者向けに、行政書士と社労士の違いと、失敗しない相談の考え方を実務目線で解説します。
結論:外国人雇用の相談先
・就労ビザ・在留資格 → 行政書士
・社会保険・労務管理 → 社労士
・外国人雇用全体 → 両方の視点が必要
※外国人雇用は「採用後」ではなく、求人前(採用前)の相談が最も重要です。
外国人雇用で社長がまず誤解しやすいこと
多くの社長は「就労ビザ」という言葉をひとまとめに理解されていることが多いようです。
しかし、実際には
・技術・人文知識・国際業務
・特定技能
・技能実習(今後は育成就労へ移行予定)
など、仕事内容や経歴によって取得できる在留資格は異なります。
つまり、
「採用したい人材 = 必ず働ける」 ではありません。
この点を知らないまま採用を進めてしまうことが、後のトラブルにつながります。
就労ビザの種類や要件の全体像は、以下の記事で詳しく解説しています。
就労ビザとは?種類・申請手続き・注意点まで中小企業向けにやさしく解説
外国人雇用の手続きはなぜ複雑なのか
外国人雇用では、入管法と労働法という異なる分野が同時に関係してきます。
そのため、外国人を雇用する際に日本人採用と同じ感覚で進めると、手続きが分断されやすくなりますし、外国人特有の制度や考え方・慣習に対応できないのです。
外国人雇用における行政書士と社労士の役割の違い
外国人雇用は、大きく2つの分野で成り立っています。
行政書士の主な役割(入管・ビザ)
・就労ビザ申請
・在留資格該当性の判断
・更新・変更手続き
・入管対応
→ 適切なビザを判断し、 ビザの取得・更新・変更等をサポートする専門家
社労士の主な役割(労務・会社運営)
・労働条件設計、労働条件通知書、雇用契約書等の作成
・就業規則等の社内規程整備
・社会保険手続き
・労務管理
→ 適法に外国人を雇用し、就労環境を整えることを支える専門家
【比較表】行政書士と社労士の違い
外国人雇用では、次のように専門領域が分かれています。
| 内容 | 行政書士 | 社労士 |
|---|---|---|
| 就労ビザ申請 | ◎ | × |
| 在留資格判断 | ◎ | △ |
| 入管対応 | ◎ | × |
| 社会保険手続き | × | ◎ |
| 労務管理 | × | ◎ |
| 労働基準監督署・年金事務所調査対応 | × | ◎ |
実際に多い「相談先を間違えたケース」
採用したのに就労ビザが取得できなかったケース
実務では、採用後に
「この内定者のビザ取れますか?」
と相談を受けることが結構あります。
しかし内容を確認すると、
学歴・職務経験と従事予定業務の内容が関連しておらず、ビザの取得ができないケースがあります。
結果として、
・内定取消
・採用計画のやり直し
・企業・求職者双方の負担
という不幸な結果になります。
これは採用前に相談していれば防げたケースです。
実際には、このようなご相談は年に複数回発生しており、外国人採用では決して珍しいケースではありません。
行政書士だけ・社労士だけの場合に起きやすいズレ
行政書士のみの場合
・就業規則や社内規程への反映が不足
・外国人雇用特有の労務設計まで踏み込めない
社労士のみの場合
・在留資格判断が難しい
・業務内容の書き方がビザ要件と一致しない場合あり
外国人雇用では、
ビザと労務が「リンク」して初めて成立します。
外国人雇用は「採用前相談」が最も重要
理想的な相談タイミングは 求人を出す前 です。
採用前に、
・どのような業務を任せたいか
・それに対応する在留資格
・必要な学歴・職歴条件
を整理して、事前に会社側で把握しておくことで、
「この条件の人材を採用すればビザ取得可能」
という準備ができます。
実際、私の顧問先企業では採用前にご相談いただくことで、採用後にビザ取得ができなかったケースはありません。
顧問先企業様から「採用予定の業務内容」を事前に共有いただき、想定する在留資格・職務内容の整理(単純労働に当たらないか、雇用契約書作成上の注意点の説明、配置転換の注意点など)まで確認したうえで採用を進めていただいています。
このことは企業側にとっても、採用手続きが止まるリスクを防ぎ、採用コストの無駄を減らすことにつながります。
私も事前にご相談いただくことで、採用後のビザ申請や社会保険手続きをスムーズに進めることができています。
外国人雇用サポートの費用相場(目安)
※事務所・地域・内容により異なります。
特定技能では「登録支援機関」も重要
特定技能で外国人を雇用する場合、登録支援機関による支援を検討することが重要になります(任意)。
特に初めて外国人雇用を行う企業では、
・生活支援
・定着支援
・トラブル対応
のノウハウが必要なため、登録支援機関の活用をおすすめしています。
今後は在留資格制度が変わる可能性もある
今後、技能実習に代わる「育成就労制度」の開始により、
これまで技術・人文知識・国際業務で許可されていた業務が、見直される可能性も考えられます。また、見直しにあたって入管の会社への立ち入り調査や外国人社員への業務内容の聞き取り等が以前よりも重点的に行われてきています。
つまり、
今は問題なくても、将来は同じ判断にならない可能性
もあります。
そのため、制度理解に基づいた法令を遵守した雇用設計が重要になります。
まとめ|外国人雇用は「どちらか」ではなく両輪
外国人雇用では、
・行政書士=ビザ
・社労士=労務
という役割があります。
しかし実務では、この2つは切り離せません。
採用前から両方の視点で設計することが、企業・外国人双方にとって最も安全で効率的な方法です。
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この記事を書いた人
行政書士・社会保険労務士
外国人雇用支援を専門に、中小企業・スタートアップを中心に対応。
・採用前相談からビザ取得・労務管理まで一体支援
・外国人関連相談対応
・英文就業規則・外国人雇用体制整備にも対応
外国人採用を検討している段階でもご相談可能です。
「この人を採用してもビザ申請は大丈夫か確認したい」という段階からお気軽にご相談ください。
