賞与支給時の社会保険料・雇用保険料の計算と届出|退職・育休・住民税の扱いを社労士が解説


はじめに

年末や年度末のボーナス支給シーズンになると、給与計算や社会保険の事務が集中します。

「社会保険料はどう計算するの?」

「賞与を支払ったときに必要な社会保険手続きはありますか?」

と悩まれる事務担当者も多いのではないでしょうか。

賞与は一時的な支給であっても、社会保険や税金の取扱いが給与と若干異なります。

誤った処理をすると後で修正が必要になることもあり、会社の信用にも関わるため、正確な理解が大切です。


この記事を書いた人

よしもと国際行政書士・社会保険労務士事務所 代表

行政書士・社会保険労務士

吉本 祐樹(Yuki Yoshimoto)



この記事では、賞与支給時の注意点、主に健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の計算方法、免除、住民税の取扱い、賞与支払届の提出について、社労士の視点でわかりやすく解説します。

賞与支給時に必要な社会保険手続きの全体像

賞与を支給した際は、事業主は「賞与支払届」を日本年金機構へ提出する必要があります。

この届出は、賞与を支給するたびに都度提出しなければならない法定の義務です。

賞与支給時の基本的な流れ

① 賞与額を決定

② 賞与から控除する額を計算( 健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・源泉所得税)

③ 「賞与支払届」を作成・提出(賞与支給日から5日以内)

健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の計算方法

計算式:標準賞与額 × 保険料率 ÷ 2 = 控除額

標準賞与額とは、賞与額から1,000円未満を切り捨てた額をいいます。
例:賞与額782,200円の場合 → 標準賞与額782,000円

※給与計算時の「標準報酬月額表」を使用した計算方法とは異なりますので、注意が必要です。

健康保険料:都道府県または健康保険組合ごとの料率を使用

介護保険料:全国一律料率(40〜64歳の第2号被保険者からのみ控除)

厚生年金保険料:全国一律料率

標準賞与額の上限に注意(健保・介保・厚年の違い)

厚生年金保険

1回の支給につき、150万円が上限とされています。

150万円を超える部分は対象外です。

健康保険・介護保険

年度(4月〜翌年3月)の累計で、標準賞与額が573万円までを対象にします。

年度で573万円を超えた部分には、健康保険料・介護保険料はかかりません。

具体例

例:同一年度に賞与を2回支給(夏300万円+冬300万円)

厚生年金:夏は150万円、冬は150万円を標準賞与額とします

健康保険・介護保険:夏は300万円、冬は273万円を標準賞与額とします(573万円を超える27万円は含めません)

賞与から保険料を控除しない場合もある?

賞与支給時には、原則として次の4つの保険料を控除します。

健康保険料

介護保険料(40〜64歳のみ)

厚生年金保険料

雇用保険料

ただし、次の2つのケースでは健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料がかからないことがあります。

一方で、雇用保険料と所得税(源泉所得税)は原則として控除が必要です。

退職する従業員に賞与を支給する場合

退職月に賞与を支給する場合は、退職日によって取扱いが異なります。

退職日が月の途中(例:15日・20日など)

退職日が月末以外の場合は、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は控除不要です。
  
ただし、雇用保険料と所得税は控除します。

退職日が月末の場合

退職日が月末の場合は、まだ月末時点では会社に在籍していることになるため、退職月の健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は発生します(控除が必要)。

雇用保険料・所得税は控除します。

💡ポイント
・退職日が月の途中 → 健康・介護・厚年は控除なし、雇用保険は控除あり
・退職日が月末 → すべての保険料を控除

産前産後休業・育児休業中の従業員に賞与を支給する場合

産前産後休業または育児休業中に支給される賞与には、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料はかかりません。

保険料が免除されるのは本人だけでなく、会社負担も免除になります。

⚠ 注意点
「賞与支給月の末日を含む1か月を超える連続した育児休業」でなければ免除対象になりません。短期休業では免除されません。

この場合も、雇用保険料と所得税は控除します。

雇用保険料

賞与を支給した場合は、雇用保険料を控除します。

計算式:賞与額 × 雇用保険料率

注意が必要なのは、恩恵的な賞与(寸志として金一封を支給するような場合)については、雇用保険料を徴収する必要はありません。

退職後に賞与を支給する場合の雇用保険料の取扱い

退職後に賞与を支給する場合も、その在職期間中の労働に対して支払うものであれば雇用保険料の対象となります。

つまり、その賞与計算期間に雇用保険に加入していたのであれば、雇用保険料を控除します。

産前産後休業・育児休業中の従業員に賞与を支給する場合

社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険料)と異なり、産前産後休業・育児休業中の従業員に賞与を支給した場合は、雇用保険料を徴収します

賞与にかかる所得税(源泉所得税)について

賞与支給時には、所得税(源泉所得税)の控除も必要になります。

賞与支給時の所得税控除額の計算手順は次の通りです。

 ①前月の給与(社会保険料控除後)の金額を確認
     ⇩
 ➁扶養親族の人数を確認し、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から該当する所得税率を確認
     ⇩
 ③賞与額から社会保険料を差し引き、その金額に上記の所得税率を掛ける

詳細は国税庁の最新表をご確認ください。
👉 国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和7年度版)

賞与支給時にも住民税を控除するの?

賞与支給時には、住民税(特別徴収税)は控除されません。

住民税は前年の所得に基づき、6月から翌年5月までの12か月間、毎月の給与から均等に天引きされる仕組みのため、賞与から別途控除する必要はなく、賞与と同じ支給月の給与から住民税を控除します。

賞与支払届の提出手続きと期限

賞与支払届のエクセルファイルダウンロード(日本年金機構のホームページより)

提出期限:賞与支給日から5日以内

提出先:事務センターまたは管轄の年金事務所

提出方法:電子申請、電子媒体、郵送、窓口持参

まとめ

賞与(ボーナス)の支給は、社員にとっては嬉しいイベントですが、会社にとっては社会保険・雇用保険・税金が一度に関わるため慎重な処理が求められます。

特に、

・賞与支給時の社会保険料等の控除額の計算方法

・退職者や育児休業中の従業員への支給

・賞与支給日から5日以内の「賞与支払届」提出

といった部分で誤りや漏れが生じやすいため、正確に処理することが重要です

不安がある場合は、社会保険労務士や税理士などの専門家に確認することで、後のトラブルや訂正手続きの負担を防げます。