賞与(ボーナス)の支給は義務?出さないと違法?経営者が知っておくべきルールと就業規則のポイントを社労士が徹底解説


はじめに

「就業規則に『賞与を支給する』と書いてあるが、赤字でも出さなきゃいけないのか?」

「長年出し続けてきたボーナスをこの夏だけカットしたら、違法になる?」

こうした質問は、中小企業の経営者様から非常に多く寄せられます。

結論から申し上げますと、法律上、賞与(ボーナス)の支給は義務ではありません

しかし “就業規則の書き方” や “これまでの運用方法” によって、会社が賞与を支払わなければならない義務(=法的リスク) が発生してしまうケースがあります。

さらに、外国人社員を雇用する企業の場合、国籍による不当な不利益取扱いは厳しく禁止 されており、日本人と同様の基準で賞与制度を運用する必要があります。


この記事を書いた人

よしもと国際行政書士・社会保険労務士事務所 代表

行政書士・社会保険労務士

吉本 祐樹(Yuki Yoshimoto)


本記事では、社労士としての実務経験を踏まえ、賞与の法的な位置づけ、不支給・減額が違法になってしまう典型パターン、就業規則に必ず入れるべき条文例、外国人社員を雇う企業が注意すべきポイント、社会保険(標準報酬月額)に関する誤解の整理を徹底解説します。

経営者・人事担当者の方は、この記事を読むだけで賞与に関する主要な労務リスクを回避できる内容になっています。

賞与(ボーナス)とは? 法律上の定義とルール

毎月の給与とは違う「賞与」の性質

労働基準法において、賃金は「労働の対償」とされていますが、賞与(ボーナス)に関する直接的な支払い義務の規定はありません。

行政解釈では、賞与は以下のように定義されています。

賞与とは 定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績・会社の業績等を勘案して支給されるものであって、その支給額があらかじめ確定していないもの

つまり、賞与を「出すか出さないか」「いくら出すか」は、原則として会社が自由に決めることができます。

ただし、ここからが注意点です。

就業規則の書き方・長年の運用の仕方によっては、賞与の「支払義務」が発生してしまうことがあります。

注意!賞与の「支払義務」が発生してしまう3つのケース

法律上は任意の制度である賞与ですが、次の3つのケースに当てはまると、会社に賞与の支給義務が生じ、不支給・減額が違法となる可能性があります。

就業規則で「賞与を支給する」とだけ規定している

以下はもっとも多いリスクのある就業規則の記載例です。 御社の就業規則や雇用契約書に、以下のように書かれていませんか?

× リスクのある記載例

「賞与は、毎年6月および12月に支給する。」

このように「支給する」と断定形で明記されている場合、業績が悪化・従業員の勤務不良・コロナのような予測不可能な特殊事情があっても、従業員には「賞与をもらう権利(請求権)」があると判断されます。

会社側の都合で不支給とすると、契約違反(債務不履行) と評価されるおそれがあります。

賞与の算定基準が一律で固定されている

基本給の○ヶ月分を支給する」と明確に規定している場合です。

リスクのある記載例

「賞与の額は、基本給の4ヶ月分を支給する。」

このように計算方法が確定していると、会社の裁量の余地がなく、支給義務があると判断されます。

賞与制度を柔軟に運用するためには、会社の業績・勤務成績を勘案して決定するといった会社側の広い裁量があることを規定すること必要になります。

賞与の支給が長年の「労使慣行」になっている

就業規則等に賞与の規定がなくても、「創業以来30年間、夏と冬の年2回全社員に必ず賞与を支給してきた」といった実績があるような場合です。

このような場合、従業員に「当然今年も支給される」という強い期待が生まれており、突然の不支給は不利益変更として無効となる可能性があります。

※数年続いただけでは慣行にはなりにくいですが、実務上は注意が必要です。

リスク回避のため就業規則に必ず入れるべき「2つの条文」

賞与トラブルを防ぐためには、就業規則・賃金規程の書き方が重要です。

最低限、次の2点は必ず入れておくべきです。

「賞与を支給しない場合がある」旨の明記

会社の業績悪化や従業員の勤務成績不良など、さまざまな事態に備えるためには、事業主に広い裁量を認める規定が必要です。

そのため、就業規則(賃金規程)には 賞与を支給しない場合があり得ることを必ず明文化 しておく必要があります。

推奨される記載例

賞与は、会社の業績および従業員の勤務成績等を勘案して支給する。

ただし、会社の業績、従業員の勤務成績、その他やむを得ない事由により、支給しないことがある。

この一文を入れておくだけで、賞与を支給しない場合を正当化できる余地が確保され、法的リスクが大幅に削減可能です。

支給日在籍要件(支給日に会社に在籍していないと賞与を支払わないとする規定)

「賞与の査定期間中は働いていたのだから、支給日前に退職してもその分を払え」と言われるトラブルを防ぐための規定です。

推奨される記載例

「賞与は、支給日に在籍している従業員に限り支給する。」

判例においても、この「支給日在籍要件」は有効性が認められています。

この規定がないと、支給日まえに退職した者への賞与の支給を拒否できない可能性があります。

ただし、この規定があっても賞与を支払わなければならないとされた裁判例もありますので、その詳細については別ブログで解説します。

よくある誤解:「年4回支給」は賞与ではなくなる?(社会保険の注意点)

「賞与を年4回以上出すと、賞与扱いにならない」という話を聞いたことがあるかもしれません。

これは労働法の話ではなく、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続き上の話です。

社会保険上の「賞与」と「報酬」の違い

年3回以内の支給: 社会保険上「賞与」として扱われます。支給のたびに「賞与支払届」を提出し、賞与としての保険料を計算します。

年4回以上の支給: 社会保険上は「賞与」ではなく「通常の報酬(月給)」の一部とみなされます。

【何が問題になるのか?】

年4回以上支給すると、給与の社会保険料の計算ベース(標準報酬月額)に賞与分が組み込まれるため、保険料計算が複雑になったり、毎月の保険料負担額が大きくなるといったことが発生します。

そのため、事務手続きの簡素化という観点から、賞与は「年3回以内(夏・冬・決算賞与など)」に設定する会社が多いです。

外国人社員の賞与の取扱い(差別的取扱いは厳禁)

外国人社員にも日本人と同じ賞与・社会保険のルールが適用されます。

国籍を理由に減額・不支給にすると、労働基準法3条の「国籍による差別」に当たる可能性があります。

技能実習・特定技能・技人国いずれも、労働者である以上は賞与制度があれば、合理的な理由がない限り日本人と同等に適用する必要があります。

まとめ:賞与トラブル防止のカギは「規程の整備と運用」

賞与は従業員のモチベーションに直結する大切な制度ですが、運用を間違えると大きな労務リスクになります。

【本記事の重要ポイント】

・賞与の支給は法律上の義務ではないが、就業規則の書き方次第で義務になることも

・就業規則には、「業績や勤務成績等により支給しない場合がある」と必ず明記する

・「支給日に在籍している者の限り支給」という在籍要件を入れて、退職時のトラブルを防ぐ(例外あり)

・年4回以上の支給は、社会保険料の計算が変わるため注意が必要

「うちの会社の就業規則は、昔作ったままで改訂していないので問題ないか確認してほしい」

「今度の賞与から、評価制度をしっかり反映させたい」

このようにお考えの経営者様は、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。

御社の実情に合わせた、リスクの少ない最適な規程作り・見直しをサポートいたします。

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