はじめに
「新しく社員を採用したけど、健康診断って会社でやらないといけないの?」
「パートやアルバイト、外国人社員にも健康診断は必要?」
このような質問を中小企業の経営者や人事担当者からよくいただきます。
実は、雇入れ時の健康診断は労働安全衛生法で定められた法定義務であり、正社員だけでなくパート・アルバイト・外国人を含む「常時使用する労働者」すべてが対象となります。

【この記事を書いた人】
よしもと国際行政書士・社会保険労務士事務所 代表
行政書士・社会保険労務士
吉本 祐樹(Yuki Yoshimoto)
本記事では、
・法的根拠と対象者
・実施の時期・費用負担
・検査項目と健康診断結果の保存期間
・労基署への報告義務
・外国人社員にも必要な理由
を社労士の立場から分かりやすく解説します。
雇入れ時の健康診断とは?
雇入れ時の健康診断は、労働安全衛生法第66条第1項に基づく健康診断の一種で、そのうち「雇入れ時に実施すべきもの」として労働安全衛生規則第43条で定められています。
目的は、労働者が安全・適切に業務に従事できる健康状態であるかを確認し、労働災害や健康障害を防止することにあります。
労働安全衛生規則 第43条(雇入時の健康診断)
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
雇入れ時健康診断の対象者となる「常時使用する労働者」とは?
「常時使用する労働者」とは、雇用形態や国籍を問わず、継続的に使用されるすべての労働者を指します。
継続的に使用されるすべての労働者とは、以下のように定義されています。
① 期間の定めのない契約、または1年以上の有期契約(更新を含む)で使用されることが予定されている者
② 短時間労働者であっても、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上である者
パートやアルバイトであっても上記に該当すれば対象です。
また、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3未満でも、2分の1以上であれば、健診実施が「望ましい」とされています。
外国人社員にも雇入れ時の健康診断は必要?
「外国人社員は対象外では?」という質問を受けることがありますが、健康診断の義務は国籍を問わず、全労働者に適用されます。
労働安全衛生法第66条第1項では「常時使用する労働者」と規定されており、外国人であっても日本国内で労働契約を結び、継続的に勤務する場合は対象です。
「特定技能」では健康診断受診が必須ですし、「技能実習」についても入社前に健康診断を行うのが通常なので、これらの場合には受入企業が雇入れ時の健康診断を実施する必要はありません。
💡 外国人社員にも健康診断を実施することは、
法令遵守だけでなく、企業の安全配慮義務の履行にもつながります。
雇入れ時の健康診断は、いつまでに実施すべき?
雇入れ時の健康診断は、入社前または、入社後できるだけ早く(目安:配属先を決める前)に実施します。
これを怠った場合、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
過去3か月以内に雇入れ時の健康診断と同一項目の健診を受けている場合は、その結果表を提出してもらえば代替可能なため、健康診断の実施は不要です。
在留資格「技能実習」や「特定技能」はこれに当てはまるため、雇い入れ時にもう一度健康診断を行う必要はありません。
雇入れ時の健康診断 検査項目(法定11項目)
労働安全衛生規則 第43条
一 既往歴および業務歴の調査
二 自覚症状および他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
四 胸部エックス線検査および喀痰検査
五 血圧の測定
六 貧血検査
七 肝機能検査
八 血中脂質検査
九 血糖検査
十 尿検査(糖および蛋白の有無)
十一 心電図検査
雇入れ時の健康診断 費用負担と勤務時間中の扱い
健診の費用は、全額会社負担です。
・勤務時間中に受診する場合の給与の取り扱い(外出として賃金控除を行うかどうか)は、基本的に労使が協議の上決定すべきとされていますが、受診に要した時間分の賃金を支払うのが望ましいとされています。
・休日に受診することも可能で、その場合は賃金支払いの必要はありません。
💡 就業規則の安全衛生条項に「健診の時期・費用負担・賃金の扱い」を明記しておくと安心です。
健診結果票の保存期間と取扱い
会社には、健康診断結果票を5年間保存する義務があります。
健康診断で「要再検査」「要精密検査」などの所見があった場合は、労働者に再検査を受けるよう促し、必要に応じて配置転換や職場環境改善などの措置を講じる必要があります。
この際の再検査費用については、会社が負担する義務はありません。
ただし、受診させること自体は会社の義務ではないものの、所見を放置して症状が発生・悪化するケースも少なくありません。
そのため、従業員が長く健康に働けるよう、福利厚生の一環として初回の再検査費用を会社が負担するケースも見られます。
雇入れ時の健康診断実施後の労働基準監督署への報告は不要
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、健康診断の結果をまとめた「定期健康診断結果報告書」を、毎年労働基準監督署に提出する義務があります。
この提出義務は、定期健康診断(雇入れ時の健康診断の実施後、毎年1回実施するもの)を行ったうえで、常時50人以上の労働者を雇用している事業場に課されています。
なお、雇入れ時の健康診断については、たとえ常時50人以上の労働者を使用していても、労働基準監督署への報告義務はありません。
ただし、健康診断結果の記録・保存は、事業規模にかかわらずすべての事業者に義務付けられています。
よくある質問(FAQ)
Q1.雇入れ時の健康診断はアルバイトにも必要ですか?
A.所定労働時間が正社員の4分の3以上ある場合は、アルバイト・パート等の名称を問わず対象となります。
所定労働時間が正社員の4分の3未満でも、2分の1以上であれば、会社が実施することが望ましいとされています。
Q2.外国人社員にも健康診断は必要ですか?
A.はい。国籍を問わず、健康診断を受診させる必要があります。
Q3.健康診断を受けさせなかった場合、罰則はありますか?
A.はい。50万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、労基署の是正勧告の対象にもなります。
Q4.健診結果に「要再検査」があった場合、会社が費用を負担する必要はありますか?
A.再検査の費用は会社負担の義務はありませんが、
福利厚生や安全配慮義務の観点から、費用を会社が補助するケースもあります。
Q5.健診の結果票はどれくらい保存しておけばいいですか?
A.5年間の保存が義務付けられています。
あわせて実施すべき「雇入れ時の安全衛生教育」
雇入れ時には、健康診断だけでなく労働安全衛生法第59条に基づく「安全衛生教育」も必要です。
作業手順、保護具の使用方法、緊急時の対応などを教育し、従業員が安全に働ける職場環境を整えましょう。
雇入れ時に行うべきこと
・雇入れ時の健康診断
・安全衛生教育
まとめ
雇入れ時の健康診断は法定義務であり、外国人を雇用する場合も例外なく実施が必要です。
・健診費用は 会社負担
・健診結果票は 5年間保存義務
・雇入れ時健診については 労働基準監督署への報告不要
・「常時使用する労働者」には、パート・アルバイト・外国人社員も含まれる
外国人を含むすべての従業員の健康を守ることは、企業の安全配慮義務を果たすうえで欠かせません。適切な健診体制を整え、安心して働ける職場づくりを進めましょう。
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また、外国人社員の就労ビザ取得後の労務管理や社会保険・労働保険手続き、就業規則・安全衛生管理体制の整備など、労務コンプライアンス全般のご相談も承っております。
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