就労ビザで働く外国人が休職したらビザはどうなる?3か月ルール・更新・会社対応を行政書士が解説【2026年版】


はじめに

就労ビザで働いている外国人の方が、病気やメンタル不調、けがなどで休職することがあります。

このとき、外国人本人も会社も気になるのが、次のような点ではないでしょうか。

・休職して仕事をしていないと、就労ビザは取り消されるのか

・「3か月働いていないと在留資格取消し」と聞いたが本当か

・休職中に在留期間更新はできるのか

・会社として何を準備しておけばよいのか

・傷病手当金などの手続きはどうなるのか

結論からいうと、以下の通りとなります。

・病気やけがによる正式な休職なら、直ちに就労ビザが取り消されるわけではありません

・問題になるのは、正当な理由なく3か月以上、その在留資格に応じた活動をしていない場合です

・更新時は、休職理由・雇用継続・復職見込みを資料で説明できるかが重要です

ただし、だからといって、ただ通常通りの更新申請をすればよいというわけではありません。

休職の理由、会社との雇用関係、復職予定、休職中の生活保障や連絡体制などを、きちんと説明できる状態にしておくことが大切です。

厚生労働省も、休職に入る段階で就業規則や連絡方法、傷病手当金、社会保険料負担などを本人に分かりやすく示すことが重要だとしています。


この記事を書いた人

よしもと国際行政書士・社会保険労務士事務所

行政書士・社会保険労務士

吉本 祐樹(Yuki Yoshimoto)


この記事では、就労ビザで働く外国人が病気やメンタル不調などで休職した場合に、在留資格にどのような影響があるのか、いわゆる「3か月ルール」の考え方、在留期間更新のポイント、会社が取るべき対応について、実務上の注意点を交えながら分かりやすく解説します。

就労ビザの「3か月ルール」とは?

まず誤解が多いのですが、就労ビザには「3か月働かなかったら自動的に失効する」というルールがあるわけではありません。

出入国在留管理庁は、在留資格取消しの対象の一つとして、

正当な理由なく3か月以上、その在留資格に応じた活動を行っていない場合

を挙げています。つまりポイントは、次の2つです。

3か月以上活動していないこと

②その活動を行っていないことに「正当な理由」がないこと

病気療養やけが、医師の指示による休養などの事情で休職している場合は、その経緯や理由を診断書などの資料で説明できれば、直ちに在留資格取消しの対象になるとは限りません。

病気やメンタル不調で休職した場合、ビザはどうなる?

結論:正当な理由があれば、直ちに取消しとはならない

病気やメンタル不調で仕事ができず、会社の制度に基づいて休職している場合は、通常、「正当な理由がある」として説明できる余地があります。

特に、次のような事情が整っていると、休職の合理性を説明しやすくなります。

・医師の診断書がある

・会社の就業規則に休職制度がある

・会社が正式に休職扱いとしている

・雇用関係が継続している

・本人と会社が連絡を取り、復職に向けた調整をしている

・生活保障として傷病手当金等の手続きをしている

厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」や「こころの耳」のQ&Aでも、休職に入る際には、休職期間、復職手続、連絡窓口、傷病手当金、社会保険料の扱いなどを事前に整理し、主治医・会社・本人の連携を早い段階から意識することが大切だとされています。

逆に注意したいケース

一方で、次のような場合は、注意が必要です。

・会社に在籍しているが、実際には長期間まったく連絡を取っていない

・診断書もなく、休職の理由が客観的に示せない

・復職予定もなく、会社側も病状を把握していない

・更新時に「なぜ働いていなかったのか」を説明できない

在留資格の審査は、単に会社に在籍しているかだけでなく、その在留資格に応じた活動を行ってきたか、そして今後も適法・安定的に継続できるかという観点でも見られます。

したがって、病気休職そのものが直ちに不利になるわけではありませんが、その理由を説明できる資料が乏しいまま長期化することは好ましくありません。

休職中でも在留期間更新はできる?

結論:在留期間更新は可能なケースもある

休職中であっても、在留期間更新が許可されないわけではありません。

ただし、更新では、現在の状況と今後の見込みを丁寧に説明する必要があります

たとえば、次のような資料が実務上重要になります。

・会社の在職証明書

・休職辞令や休職証明書

・就業規則の休職規定

・病院の診断書

・復職見込みに関する主治医や産業医の説明書

・休職前後の給与資料や雇用契約書

・会社が復職を前提に受入れを継続していることの説明文等

実務でも、メンタル不調でやむを得ず休職していたケースについて、その経緯や休職中の状況・休職後の業務復帰までのプランを丁寧に説明し、診断書等の資料を添えて更新申請を行い許可が出ているケースもあります。

もっとも、これは個別事情で結論が変わるため、一般論としては「休職中でも更新の余地はあるが、それを説明する資料の提出が重要」になります。

ビザ更新時に特に見られやすいポイント

更新時には、主に次の点が重点的に見られやすいです。

・休職理由に客観性・合理性があるか

・休職が就業規則等の社内手続きに基づくものか

・雇用関係が継続しているか

・復職可能性があるか

・生活基盤が維持されているか

・納税や社会保険など公的義務の履行に問題がないか

特に、働いていない期間があることより、その理由と今後の見通しを合理的に説明できるかが重要です。

会社がやるべき対応

休職を正式な社内手続としておこなう

まず重要なのは、口頭だけで曖昧に休ませるのではなく、会社の制度に基づく正式な休職として行っていくことです。

就業規則の休職規定を確認し、休職開始日、理由、連絡方法、復職手続などを明確にしておくべきです。

さらに、その内容を休職する社員にも丁寧に説明する必要があります。

対象者が外国人社員である場合は、日本人の時以上に分かりやすい日本語を使用したり、通訳を入れるなどして本人の理解を確認しながら説明をしていくことがとても重要です。

可能であれば、面談の際に就業規則の休職規定に関する部分を母国語等に翻訳した書面を外国人社員に交付しておくことが、後々のトラブル防止の観点から望ましいです。

診断書・面談記録・連絡記録を残す

入管対応でも労務対応でも、後から書面で説明できることが大変重要です。

そのため、次のような資料は保管しておくべきです。

・診断書

・休職発令書

・面談記録

・電話、メール等の連絡履歴

・復職支援プラン

・会社意見書や受入れ方針

厚生労働省の職場復帰支援の考え方でも、主治医、会社、本人の連携や、復職支援プランの作成・見直しが重視されています。

傷病手当金など生活保障の案内をする

業務外の病気やけがで休業し、一定の要件を満たす場合には、健康保険の傷病手当金が支給される可能性があります。

主な支給要件として、

①療養のためであること

②労務に服することができないとき

③継続した3日間の待期を満たしていること

が求められます。

これらの要件を満たした場合、4日目以降の休業について傷病手当金が支給されます。

なお、休業中に給与の支払いがある場合でも、その額が傷病手当金の日額より少ないときは、差額が支給されることがあります。

休職中は収入面への不安が大きくなりやすいため、会社としても、傷病手当金の制度案内や申請書の準備、社会保険料の控除方法の説明などを丁寧に行うことが大切です。

また、休職期間中の給与の取扱いに加え、税金や社会保険料の支払いはどうなるのか、どのような方法で支払うのかについても、あらかじめ説明しておく必要があります。

復職判断を急がない

主治医の「復職可」の診断が出ても、それだけで直ちに通常勤務に戻せるとは限りません。

厚生労働省は、毎日の通勤・就業が継続できる生活リズムが整っているか、就業上の配慮が必要か、主治医・産業医等の意見を踏まえて判断することを勧めています。

外国人社員の場合は、ここに加えて、就労ビザ上の職務内容に戻れるのかということも重要な点です。

たとえば、技術・人文知識・国際業務の在留資格なのに、復職後の仕事が単純労働中心に変わってしまうと、別の在留資格に変更しなければならない等の問題が生じる可能性があります。

特定技能は特に注意

ここまで、主に一般的な就労ビザを前提に説明しましたが、特定技能はより注意が必要です。

出入国在留管理庁は、特定技能外国人について、受入れ困難となった場合には事由が生じた日から14日以内の届出を求めています。

また、1か月以上の活動未実施期間が生じた場合には、その状況を説明する書面の提出が必要です。

特定技能の外国人が病気やけがで長く働けない場合や、退職することになった場合は、提出書類が何種類かあるため、会社だけで判断せず、早めに行政書士や登録支援機関に確認したうえでこれらの手続きを行う方が安心です。

休職期間満了で退職する場合の注意点

休職期間満了までに復職できず、結果として退職となることもあります。

この場合、外国人社員については、日本人とは異なり、在留資格に関する届出や、その後の在留活動に注意が必要です。

就労系の在留資格では、退職などにより所属機関に変更があったとき、入管に対して「所属機関等に関する届出」が必要となる場合があり、原則として事由が生じた日から14日以内に提出します。

また、会社側も、雇用する外国人が離職した場合には、ハローワークへ外国人雇用状況届出等の提出が必要になります。当該外国人が雇用保険の被保険者である場合は、雇用保険の資格喪失届の提出により、外国人雇用状況の届出を兼ねる取扱いとなりますので、外国人雇用状況届出は別途提出不要です。

退職後に新しい就職先が決まらないまま長期間経過すると、在留資格との関係で不利に扱われるおそれもあります。

休職から退職に移る場面では、会社・本人の双方で必要な手続きを早めに確認することが大切です。

※ 外国人雇用状況届出や所属機関等に関する届出については、以下の記事で詳しく解説しています。

外国人雇用状況届出の記事

所属機関等に関する届出の記事

外国人本人が気をつけたいこと

外国人本人としては、次の点を意識しておくと安心です。

会社に無断で連絡を絶たない

休職中に会社と連絡が取れない状態は非常に危険です。

病気による療養であっても、会社との関係が切れてしまうと、単なる無断欠勤や所在不明と受け取られやすくなります。

厚生労働省も、休業中の連絡窓口・頻度・方法を整理する重要性を示しています。

診断書や治療経過の記録を残す

なぜ働けなかったのかを後から説明できるように、診断書、通院記録、会社への報告記録などは保管しておきましょう。

ビザ更新や相談の場面で非常に重要になります。

また、傷病手当金の申請にも必要になります。

退職したら届出・今後の方向性の整理を急ぐ

退職した場合は、就職活動をするのか、在留資格の変更を検討するのか、いったん帰国するのかといった今後の方針を、できるだけ早めに整理することが大切です。

会社を辞めたまま何も対応せず放置してしまう状態は、在留資格との関係でも特に注意が必要です。

もっとも、病気療養中の方にとって、体調がすぐれない中で今後の進路まで考えなければならないのは、大きな負担です。無理に日本での就職活動を急ぐ必要はありません。

症状が重い場合には、いったん母国に帰国し、まずは治療と療養に専念するという選択肢も十分に検討に値します。体調が落ち着いてから、改めて日本での就職活動や再入国を目指す方が、結果として本人にとって負担が少なく、現実的なケースもあります。

在留資格の問題をいったん整理し、不安の少ない状態にしてから再スタートすることは、決して後ろ向きな選択ではありません。むしろ、精神的なストレスを軽減し、病気の回復に安心して集中するための、無理のない進め方といえます。

焦って動くことよりも、まずは体調の回復を優先しながら、自分に合った選択肢を冷静に考えることが大切です。

よくある質問

Q1. 病気で3か月以上休職したら、就労ビザは必ず取り消されますか?

A. いいえ、必ず取り消されるわけではありません。

取消しの対象は、正当な理由なく3か月以上、在留資格に応じた活動をしていない場合です。

病気やけがによる療養、正式な休職など、合理的に説明できる事情があれば、通常直ちに取消しになるものではありません。

Q2. 休職中でも在留期間更新はできますか?

A. 可能な場合があります。

ただし、休職理由、雇用関係の継続、復職見込み等を資料で説明することが必要です。

Q3. 休職中の給料が出ない場合、生活費はどうなりますか?

A. 業務外の病気やけがで一定要件を満たせば、健康保険の傷病手当金の対象になる可能性があります。

連続3日の待期完成後、4日目以降の休業が対象で、給与の支払いがないことなどが要件です。

ただし、給与の支払いがあっても、一定の場合には差額が支給してもらえることもあります。

Q4. 会社として、休職時に最低限そろえておくべき資料は何ですか?

A. 最低限、以下の資料は整えておきたいところです。

・就業規則の休職規定

・診断書

・休職発令書

・本人との連絡記録

・復職に関する面談記録

・傷病手当金等の案内資料

・在職証明書や雇用契約書

・産業医による意見書等

まとめ

就労ビザで働く外国人が、病気やメンタル不調で休職したとしても、それだけで直ちにビザが取り消されるわけではありません。

大切なのは、なぜ働けていないのか、その理由に正当性があるか、会社との雇用関係が続いているか、今後の見通しを書類等の客観的資料により合理的に説明できるかという点です。

会社としては、休職制度に基づく正式な処理、診断書や連絡記録の保管、傷病手当金の案内、復職支援の実施などを適切に行うことが重要です。

また、外国人本人としても、会社との継続的な連絡を行い、治療経過や休職理由が分かる資料を残し、万が一退職する場合には、在留資格の整理を早めに考えることが大切です。

特に、在留期間の更新が近い場合、休職が長引いている場合、休職満了で退職の可能性がある場合、特定技能のケースでは、早めに専門家へ相談した方が安心です。

ただ、この記事を読んでいる方の中には、いま実際に体調がなかなか良くならず、仕事のことを考えるだけでも大変なのに、さらにビザのことまで考える余裕がないと不安を感じている方もいらっしゃると思います。

そのような状況では、ひとりで全部を抱え込む必要はありません。

無理にすぐ結論を出そうとしなくても大丈夫です。

日本でこのまま治療しながら復職を目指すのがよいのか、いったん帰国してしっかり休んだ方がよいのか、更新の準備をどう進めるべきか。

そのときの体調やご家族の状況、会社との関係によって、負担の少ない進め方は人それぞれです。

大切なのは、今の自分にとって何が一番無理のない方法かをしっかりと考えることです。

そして、その判断をひとりでしなくてもよいということです。

ビザの更新や今後の在留資格について不安がある場合は、行政書士等のビザの専門家に相談しながら一緒に整理していくことで、気持ちの負担を軽くできることがあります。

当事務所でも、休職中の在留資格の考え方や、更新・退職後の対応について、状況をお聞きしながら一緒に考えるサポートを行っています。

無理をしすぎず、まずは体調を大切にしてください。

そのうえで、ビザや今後のことは、必要に応じて一緒に整理していきましょう。

「まだ相談するほどではないかもしれない」という段階でも大丈夫です。

不安が大きくなる前に、まずはお気軽にお問い合わせください。