はじめに
2024年6月21日に、技能実習制度の見直しを含む改正法が公布され、これまでの技能実習制度を発展的に解消する形で、新たに育成就労制度が開始されることがすでに決まっています。
育成就労制度開始日は2027年4月1日とされており、今後、企業側の外国人材の受入れにも一部見直しが求められる部分があります。
これまでの技能実習制度は、建前上は「国際貢献のための技能移転」を目的とする制度でした。
しかし、新しい育成就労制度では、人材育成と人材確保が制度の目的として明確に位置付けられています。
企業にとっては、単なる制度名の変更ではなく、外国人材の受入れの制度目的や運用の方向性を見直す改正といえます。

【この記事を書いた人】
よしもと国際行政書士・社会保険労務士事務所
行政書士・社会保険労務士
吉本 祐樹(Yuki Yoshimoto)
この記事では、企業担当者の方向けに、育成就労制度の概要と、技能実習制度との違いを中心に、実務上押さえておきたいポイントを比較表つきでわかりやすく解説します。
なお、本記事は2026年3月時点で公表されている公式資料に基づいて作成しています。
育成就労制度とは?
育成就労制度は、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材確保が困難な産業分野において、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成し、人材を確保する制度です。
つまり、従来の技能実習のように「母国への技能移転」を前面に出す制度ではなく、日本国内での就労と育成を通じて、「将来的な戦力となる人材を確保する制度」へ転換されたといえます。
あわせて押さえておきたいのは、育成就労制度が始まっても、現在の技能実習生が直ちに育成就労へ切り替わるわけではないという点です。
2027年4月1日時点で既に来日している技能実習生や、同年3月31日までに来日する技能実習生については、引き続き技能実習制度のもとで実習を続けることができます。
また、特定技能制度もなくなるわけでもありません。
育成就労制度は、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成する制度として設計されており、その後の特定技能1号への移行も見据えた仕組みです。
つまり、制度のイメージとしては、「技能実習がすぐ全部なくなる」のではなく、経過措置のもとで現在の技能実習制度は当面続き、今後の新たな受入れは育成就労へ移っていきます。
施行日前に技能実習計画認定と在留資格認定証明書の交付を受けた人は、2027年6月30日までに入国が必要です。
さらに、引き続き日本で就労を継続したい場合に、その先に特定技能制度が位置付けられると理解するとわかりやすいでしょう。
技能実習と育成就労の違い【比較表】
まずは、技能実習制度と育成就労制度の違いを一覧で確認しておきましょう。
| 比較項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 国際貢献(技能移転)が建前 | 人材育成・人材確保が目的 |
| 制度の位置付け | 国際貢献を目的とする人材育成制度 | 特定技能1号への移行を見据えた育成・就労制度 |
| 受入れ対象 | 技能実習の対象職種・作業 | 特定産業分野の設定分野に限定され、就労を通じた育成になじまない分野は対象外 |
| 転籍(職場変更) | 原則不可 | 一定要件を満たせば本人意向の転籍が可能 |
| 日本語能力 | 入国時に日本語要件は原則なし | 就労開始前A1相当、特定技能1号移行時A2相当が基本(A2は当分の間、講習でも可) |
| 監理機関 | 監理団体 | 監理支援機関 |
| 機構の役割 | 外国人技能実習機構が監督・保護 | 外国人育成就労機構が監督・保護に加え転籍支援等も担う |
制度の目的が「国際貢献」から「人材育成・人材確保」へ変わる
技能実習制度では、制度の建前として「日本で修得した技能等を母国へ移転し、国際貢献につなげること」が中心に据えられていました。
そのため、各現場では実際に人手不足対応として十分に機能していても、技能実習制度の目的と実態の間にズレがあると長く指摘されてきました。
これに対し、育成就労制度では、人材育成と人材確保が目的として明確化されています。
企業としては、これまで以上に「一定期間受け入れて終わり」ではなく、将来的に特定技能1号へ移行し、戦力として定着してもらうことまで見据えた制度設計が求められるようになります。
受入れ対象分野は特定技能と原則一致
技能実習制度では、受入れ対象が職種・作業ごとに定められていたため、技能実習では受け入れられていた業務でも、特定技能では対象分野や業務区分の違いから、そのまま移行しにくい場合がありました。
これに対し、育成就労制度は、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成し、その後の特定技能1号への移行につなげることを前提にした制度で、受入れ対象分野が特定技能制度と原則一致する方向で制度設計されています。
もっとも、特定技能の対象分野がそのまま全て育成就労の対象になるわけではありません。
就労を通じた育成になじまない分野は、育成就労の対象外となる可能性があります。
一定の条件を満たせば、本人意向による転籍が可能になる
技能実習制度では、やむを得ない事情がある場合を除き、本人都合による転籍は原則としてできませんでした。
この点は、実習生保護や制度の実効性の面から、長く課題として指摘されてきた部分です。
育成就労制度では、やむを得ない事情による転籍に加え、本人の意向による転籍も、一定の要件を満たせば認められることになりました。
公式資料では、同一機関での就労期間、技能等の水準、日本語能力、転籍先の適正性などが要件とされています。
特に重要なのは、本人意向の転籍に関して、同一機関での就労期間は分野ごとに1年から2年の範囲で設定予定とされている点です。
また、日本語能力についても、分野ごとにA1~A2相当の試験合格が要件となる想定が示されています。
つまり、すぐに自由に転職できる制度ではなく、一定の育成と定着を前提にした上で、従来よりも柔軟な制度になるということです。
企業側から見ると、これは単に外国人社員の転職リスクが高まるということだけでなく、賃金水準、労働環境、教育体制、日本語支援などを含めて、選ばれる職場になれるかが社員の定着にとって重要になります。
日本語能力の要件がこれまで以上に明確になる
育成就労制度では、日本語能力の向上が制度の重要な要素として位置付けられています。
公表資料では、就労開始前までにA1相当以上の日本語試験合格または相当講習の受講、さらに特定技能1号移行時にはA2相当以上の日本語試験合格が基本とされています。
また、A2相当については、当分の間は相当講習の受講でも可とする経過的な扱いも示されています。
企業としては、採用時点の日本語能力だけではなく、入国後・就労後も含めて、計画的に日本語能力を高めていく支援が必要になります。
従来の技能実習でも日本語教育は重要でしたが、育成就労では、より制度上必要性が明確にされました。
今後は、日本語検定受験機会の確保、日本語学習の時間的配慮、外部講習の活用など、企業側の支援体制がこれまで以上に問われることになるでしょう。
監理・支援体制が厳格化される
育成就労制度では、受入れを支える機関の仕組みも大きく見直されます。
従来の監理団体は、監理支援機関へ改められ、許可要件として外部監査人の設置が求められるなど、独立性・中立性を高める方向で制度が設計されています。
また、外国人技能実習機構に代わって、外国人育成就労機構が設立される予定です。
この新しい機構は、従来の監督・保護機能に加え、育成就労外国人の転籍支援や、1号特定技能外国人への相談援助業務も担うこととされています。
企業にとっては、制度の監督が厳しくなるという面だけでなく、外国人本人の保護や相談体制の整備、適正な受入れの実現がこれまで以上に重視されると理解しておくべきでしょう。
企業が今から準備しておきたいこと
育成就労制度は2027年4月1日開始予定ですが、今のうちから準備しておくべきことは少なくありません。
まず重要なのは、自社の業務が今後の育成就労の対象分野に入るのかを確認することです。
特定技能の対象分野に入っていても、そのまま当然に育成就労の対象になるとは限らないため、今後公表される分野別運用方針を見ていく必要があります。
次に、日本語支援と定着支援の体制づくりです。
育成就労制度では、3年間で育成し、その後、特定技能1号につなげる制度設計が前提になっています。
そのため、採用だけでなく、育成計画、評価の仕組み、相談体制、生活面の支援まで含めて、受入れ後のサポート体制を見直す必要があります。
よくある質問
Q1.育成就労制度はいつから始まりますか?
A. 育成就労制度は、2027年4月1日に開始予定とされています。
Q2.今の技能実習制度は、すぐになくなるのですか?
A. いいえ、技能実習制度は、育成就労制度の開始と同時に終了するわけではありません。
2027年3月31日までに認定された技能実習計画や、施行時点で実習中の技能実習生については、そのまま技能実習を継続する経過措置が設けられています。
Q3.育成就労が始まると、特定技能制度はなくなりますか?
A. なくなりません。
育成就労制度は、特定技能1号への移行を見据えた制度であるため、特定技能制度は引き続き存続します。
将来的になくなるのは、技能実習制度です。
Q4.育成就労では自由に転職できますか?
A. いいえ、自由に転職できる制度ではありません。
本人意向による転籍は認められる方向ですが、就労期間、技能、日本語能力、転籍先の適正性など、一定の要件を満たす必要があります。
まとめ
育成就労制度は、これまでの技能実習制度をそのまま引き継ぐものではなく、人材育成と人材確保を正面から目的に据えた新しい制度です。
技能実習と比べると、制度の目的だけでなく、特定技能とのつながり、本人意向による転籍の考え方、日本語能力の位置付け、監理・支援体制など、大きな見直しが行われます。
特に企業としては、これからは「受け入れて終わり」ではなく、3年間で育成し、その後の特定技能1号への移行や定着まで見据えた受入れ体制を整えていくことが重要になります。
2027年4月1日の制度開始まではまだ時間がありますが、今の段階から、自社が対象分野に入るか、日本語支援や相談体制の整備をどう進めるか、今後も選ばれる職場になるために何が必要かを確認しておくことが、今後の外国人材の採用・定着において大きな差につながるでしょう。

