外国人を雇用する際、ビザ申請の書類を調べていると「雇用理由書(理由書)」という聞き慣れない書類に出会う方も多いと思います。

【この記事を書いた人】
よしもと国際行政書士・社会保険労務士事務所 代表
行政書士・社会保険労務士
吉本 祐樹(Yuki Yoshimoto)
この記事では、製造業を例に雇用理由書の目的、書き方について例文を紹介しながらを解説します。
就労ビザ申請でなぜ「雇用理由書」が必要なのか?
雇用理由書は、在留資格の申請・更新において「なぜ、この外国人を採用するのか」を具体的に説明するための重要な文書です。出入国在留管理庁のウェブサイトに必須書類としては明記されていませんが、審査官が以下の点を判断するために極めて重要な補足資料となります。
・なぜ日本人では代替できないのか
・なぜ申請人が就労ビザの要件を満たしているといえるのか
・業務と申請人の専門性との関連性は何か
つまり、雇用理由書の目的は「人柄や意欲」ではなく、業務の必要性と人材の適格性を具体的に説明することにあります。
出入国在留管理庁が知りたいのは、単なる人柄や意欲の話ではなく、業務の必要性と人材の適格性です。
雇用理由書の主な役割は、以下の通りです。
・採用背景と企業側の必要性を説明する
・申請者の学歴・職歴と業務内容との関連性を明示する
・日本人では対応困難な理由を明確にする
・長期雇用の方針やサポート体制を示す
説得力ある雇用理由書に記載すべき8つの重要事項
雇用理由書に決まった形式はありませんが、以下の8つの項目を詳細に記載することで、審査官が求める情報を網羅的に伝えることができます。
①宛先(提出先の出入国在留管理局長)
②申請者の概要(氏名・国籍・生年月日など)
➂会社概要(事業内容・設立経緯・外国人採用の背景)
例:「ベトナム市場向け製品需要の増加」「技術開発力の強化」など具体的に記載
④担当する業務内容
単純作業ではなく専門性があることを強調、必要に応じて写真・図面・資料を添付
⑤申請者の経歴と業務の関連性
学歴や職歴がどう業務に活かされるかを、成績証明書などを引用しながら具体的に説明
⑥日本人では代替困難な理由
語学力・専門知識・文化理解・海外ネットワークなどを組み合わせて説明
⑦入社後のサポート体制
研修・日本語教育・社宅提供など具体的に記載
⑧会社名・代表者名・押印
雇用理由書 例文付き:製造業向け(技術・人文知識・国際業務)
以下は、工作機械メーカーがベトナム人技術者(技術・人文知識・国際業務)を採用するケースを想定した際の例文です。
雇用理由書
大阪出入国在留管理局長 殿
当社は、下記の者を将来の海外事業を担う人材として採用する予定であり、その採用に至った経緯と理由をここに詳細に記載いたします。在留資格「技術・人文知識・国際業務」の取得について、何卒ご配慮くださいますようお願い申し上げます。
1. 申請者の概要
氏名:○○○
国籍:ベトナム
生年月日:1995年☓☓月☓☓日
2. 会社概要
会社名:株式会社〇〇工業
事業内容:CNC研削盤をはじめとする工作機械の設計、製造、販売、およびメンテナンス
設立:1900年01月
資本金:5000万円
売上:70億円
当社は1900年の創業以来、日本のものづくりを支える工作機械メーカーとして、常に技術革新を追求してまいりました。近年、東南アジア諸国からの引き合いが急増しており、売上における海外比率も堅調に伸びております。現在、ベトナムのハノイとインドネシアのジャカルタに現地法人を設立し、さらなる海外展開も計画しており、その中核を担う人材の確保が喫緊の課題となっております。
弊社は、株式会社A、株式会社Bといった、日本のみならず世界を代表する大手メーカーを含め約500社と取引を行っております。
3. 申請人が従事する業務について
当社は、将来的な技術開発と国際競争力の強化を視野に入れ、次世代を担う管理職候補の育成を急務としております。特に、海外市場の需要を的確に捉え、製品開発に反映させるための戦略的な人材が不可欠です。
申請人には、弊社の技術開発チームにおける将来の管理職候補として、以下の業務を担っていただきます。
①技術開発の企画・管理: 東南アジアの市場動向や顧客ニーズを分析し、ベトナム現地法人と連携しながら、CNC研削盤をはじめとする工作機械の新製品開発プロジェクトを企画・推進します。
②外国人技術者のマネジメント: ベトナム人技術者を統括し、プロジェクトの進捗管理、人員配置、そして技術的な課題解決を指揮します。申請人の経験と日本語能力を活かし、チーム間の連携を強化し、スタッフのパフォーマンスを引き出す役割を担います。
③グローバルな技術連携の促進: 日本本社とハノイの現地法人間の技術交流を円滑にし、双方の技術的強みを融合させるための重要な橋渡し役を担います。定期的な会議の開催、現地を訪問しての技術指導等を予定。
④市場調査と製品へフィードバック: 現地法人や国内の営業・メンテナンス担当者や顧客と密に連携し、収集した情報を技術開発チームにフィードバックすることで、よりお客様の要望を反映した製品を生み出すことを目指します。
入社後まずは、当社の製品群や事業戦略、開発プロセスを深く理解していただくため、3ヶ月間の集中的な研修を受けていただきます。その後、上記の業務に本格的に従事していただき、将来的には当社の技術開発チームを牽引する中核人材としてご活躍いただくことを期待しております。
4. 申請人の学歴・職務経歴との関連性
申請人はベトナムの〇〇工科大学機械工学科を卒業後、日本の〇〇大学機械工学科に1年間留学し、日本の高度な技術に触れております。卒業後は、ベトナムにある日系企業の〇〇マシナリー社で5年間、機械の操作、メンテナンス、設計業務に従事しておりました。この間、日本人管理者と日本語で密に連携をとり、ベトナム人従業員のリーダーとして卓越したリーダーシップを発揮していました。特に、大阪府東大阪市の〇〇マシナリー本社工場での1年間の勤務経験では、〇〇旋盤の設計に携わるなど、当社の事業と直接関連性の高い専門知識と実務経験を培っています。
これらの経験から、日本のものづくりに対する深い理解を持ち、日本とベトナム両国のビジネス文化や価値観の違いを熟知していることは、当社の海外事業展開に不可欠な強みとなります。
5. 申請人雇用の理由
当社は国内事業・海外事業のさらなる拡大と技術開発の強化のため、ベトナム現地の採用エージェントを通じて日本語が堪能な機械技術者の募集を行いました。その際、申請人のこれまでの経歴とスキルが当社の求める人材像と合致し、採用を決定いたしました。
申請人は、ベトナムにある日系企業での5年間にわたる実務経験に加え、日本語能力試験N1に合格し、日本の大学への留学経験もあるため、日本語によるコミュニケーション能力は極めて高いと判断しております。面接では、その流暢な日本語だけでなく、当社の将来のビジョンに対する深い理解と、困難な状況にも柔軟に対応できる適応力も確認できました。
この競争の激しい市場においてより一層挑戦的な事業を推進していくには、○○さんのような専門知識と高い日本語能力、そして国際的なビジネス経験を持つ優秀な人材が不可欠です。また、当社に在籍するベトナム人社員30人を将来的に統括するには、日本の文化やモノづくりに精通し、ベトナム語で意思疎通をはかれる〇〇さん以外に該当する人はいません。
入社後は外部の管理職研修を受講してもらう等、技術者としてのスキルアップだけでなく管理職候補として部下の育成等についても早い段階から学んでもらうことを予定しています。
上記の事項ををご賢察の上、「技術・人文知識・国際業務」のご許可をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
2025年〇月〇日
株式会社〇〇工業
代表取締役 〇〇 〇〇 印
雇用理由書の失敗例
雇用理由書がを提出してもあまり効果がない主な失敗例は以下の通りです。
経歴との関連性が不明:申請者の経歴と業務内容の繋がりが明確に示されていない。
抽象的な表現:「やる気がある」「優秀だから」といった抽象的な言葉に終始し、数字や実績の提示等の具体的な根拠がない。
代替困難性の不足: 日本人では対応できない理由が説得力に欠ける。
審査官に納得してもらうためには、必ず数字・具体例・実績を盛り込みましょう。
まとめ
雇用理由書は、単なる形式的な書類ではなく、就労ビザの許可を左右する重要な文書です。特に製造業の場合、語学力だけでなく、専門知識や現場経験を併せ持つ外国人材の必要性を具体的に説明することが不可欠となります。
この記事でご紹介した例文やテンプレートを活用し、貴社の状況に合った説得力のある雇用理由書を作成してください。
もし作成に不安がある場合は、専門家である行政書士に依頼することで、不許可のリスクを減らすことができます。

