外国人雇用を検討されている会社様へ


外国人雇用を始めるにあたり、会社側が持っておくべき心構えがあります。それは、単に労働力を確保するということだけでなく、多様な人材が活躍できる環境を構築するという視点が大変重要です。5つの視点から特に注意していただきたい事項に限定して説明していきます。

多様性の尊重と受容
  1. 文化や習慣の理解
  2. 外国人従業員の文化や宗教観を理解し、尊重する姿勢が重要です。 ex.イスラム教徒の礼拝スペース設置やラマダン期間中の勤務時間調整など

  3. 言語の壁への配慮
  4. 外国人社員のトラブル原因の大半がコミュニケーション不足から起こっているため、通訳・翻訳サービスや多言語対応ツールを活用するなどして、外国人社員が円滑に業務を進められる環境を整えましょう。 ex.製造現場に危険を促す標識を設置、就業規則や作業手順書を多言語化する、日本語勉強会の開催等

  5. 公平な評価と機会
  6. 能力や成果に基づいた公正な評価を行い、国籍に関わらず平等な昇進やキャリアアップの機会を提供することが重要です。評価基準を明確にし、透明性を保ちましょう。

法令遵守と適正な労務管理
  1. 労働関連法規の遵守
  2. 労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令は国籍関係なく外国人労働者にも適用されますので、法令遵守を徹底しましょう。また、法改正にも常に注意を払い、適切な対応を心がけましょう。

  3. 適正な雇用契約
  4. 雇用契約書は、外国人社員が理解できる言語で作成し、労働条件や権利義務を明確に説明すること等が重要です。不当な労働条件や差別的な待遇は絶対に避けましょう。また、外国人を雇用すれば安く働かせることができるということはありません。在留資格によっては採用コストやその他の管理費用等を含めると、日本人以上にコストや手間がかかってしまうことは十分にありえます。

  5. 在留資格の管理
  6. 外国人社員の在留資格を適切に管理し、不法就労を防ぎましょう。必要なサポートを行い、在留資格の更新手続きやトラブル防止にも配慮が必要です。在留資格(ビザ)に関しては、会社か外国人社員のどちらが費用を負担するかに関して法律で定めはありません。そのため、本人に任せる会社も多いかと思います。しかし、外国人本人が申請すると不十分な知識で手続きを進めてしまう場合があり、その結果不許可が出て働けなくなるということもあります。したがって、基本的に会社主導で在留資格の手続きを行うことをお勧めします。

  7. 外国人雇用のコストについて
  8. 外国人従業員を雇う際には、採用コストや在留資格管理などの手間がかかります。外国人を雇用をすれば安く働かせることができるということはありません。むしろ、適切な労働環境や法令遵守を保つために、在留資格によっては日本人を雇用する以上にコストや管理が必要となる場合も多いです。

コミュニケーションと相互理解
  1. 積極的なコミュニケーション
  2. 外国人社員との信頼関係を築くため、定期的な面談や意見交換を行い、彼らの不安や疑問を解消するようにしましょう。また、社内イベント等を通じて日本人社員と外国人社員の相互理解を深めましょう。

  3. 相談窓口の設置
  4. 外国人従業員が(可能であれば母国語で)気軽に相談できる窓口を設け、生活や仕事に関するサポートを提供しましょう。

長期的な視点と育成
  1. 人材育成への投資
  2. 外国人従業員の能力開発やキャリアアップを支援する研修制度や日本語学習サポートを提供しましょう。

  3. 定着率の向上
  4. 働きやすい職場環境を整え、定期的なキャリア面談で外国人従業員の長期的なキャリアプランを考え、彼らのモチベーションを高めていきましょう。

  5. グローバルな視点の活用
  6. 外国人社員の知識や経験は、新たなビジネスチャンスを生む可能性があります。海外との取引や海外進出など、企業のさらなる成長につながる可能性を秘めています。

悪徳ブローカーへの注意

外国人採用やビザ更新に関して悪徳ブローカーが介在するケースが増えています。これらのブローカーは、法的に不正な方法でビザの取得や更新を手配することがあり、結果として企業が不法就労を助長してしまうリスクがあります。また、これらの業者が提示する「安価な費用」には、後々トラブルを引き起こす可能性が高いため、注意が必要です。
外国人採用においては、信頼できる行政書士や実績のある人材紹介会社に相談し、適正な手続きを踏むようにしましょう。依頼する際に資格証明書等の提示を受けるなどの対策を取ったり、不明点や疑問があれば、必ず中立的な政府機関や顧問弁護士や社労士に確認・相談をした上で進めることが、企業と外国人従業員の双方にとって安心で良好な関係を築くために不可欠なものとなります。


もし、上記の内容が自社の企業文化に合わなかったり、これらの対応が負担になるため行うことができない場合は、人材確保の手段としては、外国人採用以外を検討することをお勧めします。

外国人採用の流れ

  1. 外国から呼び寄せる場合

  2. step 1:従事させる業務と求める人材のを明確にする
    外国人採用で一番最初にすることは、従事させる業務を決定することです。
    従事させる業務が決まれば、それに対応する就労ビザが何になるか決まります。そして、それを満たす学歴や経歴を有する人材を募集することになります。
    在留資格によっては渡航費用などを会社がすべて負担しなければならなかったり、採用する外国人の数が制限される場合もありますので、外国人採用に伴う費用を事前に見積り、その在留資格で働かせる場合に会社がすべきことをこの段階でリサーチしておきましょう。


    【入社までのスケジュール目安】 6ヶ月はかかると想定しておいてください

    手続き 期間
    人材紹介会社に求人を依頼してから内定まで 1~2ヶ月
    ビザ申請から許可が出るまでの期間 1~3ヶ月
    日本に入国するまで 約1か月


    Step 2:求人票の作成
    Step1で決定した採用する職種、業務内容、必要なスキル、経験などを求人票に落とし込みます。労働基準法に基づき、労働時間、賃金、福利厚生など、就業条件を正確に設定します。可能であれば希望する国の母国語を併記したほうが、双方の誤解を減らすことができ、マッチングの精度を高めることができます。
    ※外国人であることを理由として日本人と賃金やその他の労働条件で差別することはできません。


    Step 3:求人募集の方法を決定
    外国人採用が初めての会社様は、採用から入社まで何をすればよいか分からないと思いますので、最初の1人を採用するまでは事務手続きなどをサポートしてくれる人材紹介会社等を利用することをお勧めします。コストを安くするため自社でやろうとして、必要な手続きを忘れたりやリサーチ不足が原因でビザが取得できないということもあり得ます。


    【在留資格ごとの採用方法例】

      ・技能実習…監理団体に問合せ
      ・特定技能…監理団体、職業紹介会社、外国人採用イベントの利用
      ・技術・人文知識・国際業務等の就労ビザ…職業紹介会社、外国人採用イベントの利用、学校求人、自社のホームページ、SNS等

    ポイント

      ・外国人向けの専門的な人材紹介会社に依頼した場合は、費用はかかりますが、細かいサポートや通訳も行ってくれるところも多いです。空港への送迎や入国後の手続きもすべて済ませて、会社まで連れてきてくれたり、入社後も定期的に問題がないかコンタクトを取ってくれる人材紹介会社もあります。


      ・外国人採用イベントが海外や日本でも定期的に行われています。自治体主催の無料イベントも定期的に行われていますので、自治体や出入国在留管理庁のホームページをチェックしてみてください


      ・面接の際には必ず在留カードのチェックし、本人確認を行ってください

    面接の際には必ず在留カードのチェックを行ってください


    Step 4:労働条件の明確化
    法的に適切で明確な労働条件を採用前に内定者へ書面で提示します。
    労働条件の書面による提示は法的義務でもありますし、内定者との信頼関係を構築するために必ず行いましょう。内定者の母国語を併記してあげると、後々のトラブル防止にもつながります。


    【労働条件通知書の主な構成要素】

      ・職務内容の詳細な記述(変更の範囲も記載要)


      ・給与体系の詳細


      ・勤務時間、勤務場所(変更の範囲も記載要)


      ・福利厚生の内容


      ・試用期間の具体的な条件


    Step 5:労働契約の締結
    労働条件通知にお互いが納得した時点で、次は労働契約を結ぶことになります。労働条件通知書と重複する部分もあります。

    ポイント

      ・「就労ビザが取得できなかった場合は、さかのぼって労働契約は締結されなかったこととする」という文言を雇用契約書に入れておく必要があります
      ・この文言を入れ忘れると、就労ビザを取れず働かせることもできないのに。雇用契約自体は成立してしまうという問題が起こってしまいます


    Step 6:在留資格認定証明書交付申請
    雇用契約の締結が完了したら、雇用する予定の者が外国にいる場合、日本での就労資格を取得するための在留資格認定証明書交付申請を入管へ行うことになります。
    申請から許可が出るまで2~3ヶ月かかりますので、内定を出したらすぐに書類作成に取りかかるか、行政書士に依頼することをお勧めします。


    Step 7:ビザ取得と入国
    在留資格認定証明書交付申請が許可された場合、発行された在留資格認定証明書を申請者に送り、本国の日本大使館ででビザ発給手続きを行い、日本への入国手続きを進めます。在留資格認定証明書が発行されてから3ヶ月以内に日本へ入国する必要があります。


    Step 8:入国後の手続き
    最終ステップになります。人材紹介会社に依頼した場合は、そこのスタッフが空港で外国人をピックアップしてすべての手続きを終えてから会社まで送り届けてくれるところもありますし、自社ですべて行わなければならない場合もあります。

      ・主要空港から入国した場合は、空港で在留カードを受け取る


      ・市区町村役場で住民登録を行い、在留カードに住所の記載をしてもらう


      ・市区町村役場でマイナンバーカードの申請を行う


      ・銀行口座の開設


      ・携帯電話やWIFI等の契約等


      ・入社後に社会保険の加入手続き

  3. 日本に在留している外国人を採用する場合
  4. 海外から呼び寄せる場合との違いは、外国人自身が日本での生活にも慣れてある程度日本語がしゃべれるということです。したがって、意思疎通も通訳なしで行うことができる場合がほとんどですし、生活面のサポートもあまり必要がないケースが多いです。


    step 1:従事させる業務と求める人材の明確化
    この部分は海外から呼び寄せる場合と同じです。絶対に手を抜いてはいけないステップです。海外から呼び寄せるとき以上に求職者に求める日本語能力や実務上のスキルをより明確にしておきましょう。


    【入社までのスケジュール目安】 時間がかかっても4ヶ月くらいです

    手続き 期間
    人材紹介会社に求人を依頼してから内定まで 約1ヶ月
    ビザの変更許可が出るまでの期間 ※1 1~3ヶ月
    ビザの手続き完了から入社までの期間 ビザの許可が出てから1~2週間

    ※ビザの手続きが必要ない場合もあります。詳細はStep 6で説明します。


    Step 2:求人票の作成
    このステップも海外から呼び寄せる場合と同じです。


    Step 3:求人募集の方法を決定
    日本在住の外国人を採用することが初めての場合でも、最初の1人を採用し手続きを把握するまでは事務手続きなどをサポートしてくれる人材紹介会社等を利用することをお勧めします。たたし、顧問の行政書士や社労士と契約されてる会社様で、顧問先が手続きを代行してくれたり、アドバイスをいただける場合は、自社で手続きをやってみてもよいかもしれません。くれぐれも手続きに漏れがないように、事前リサーチは欠かせません。求人方法については海外から呼び寄せる場合と基本同じですが、日本の大学や専門学校、日本語学校の就職部へコンタクトを取り、求人票を公開してもらったり、学校を訪問して学生の紹介を依頼することもコストをかけずに採用活動が可能です。


    Step 4:労働条件の明確化
    このステップも海外から呼び寄せる場合と同じです。求職者は日本語がとても流ちょうな人もいますが、実際漢字が多く書かれた文章を読ませると、ほとんど理解できないこともよくあります。母国語併記の労働条件通知書を書面で提示しましょう。


    【労働条件通知書の記載事項で、書面交付が必須なもの】
    ・労働契約の期間


    ・期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準


    ・就業の場所及び従業すべき業務


    ・始業及び終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交代勤務をさせる場合における就業時点転換に関する事項


    ・賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項


    ・退職に関する事項(解雇の事由を含む。)


    ※これら以外の事項は口頭での通知でも法的には問題ありませんが 可能な限り書面で交付する方が、お互いの信頼関係構築とトラブル防止のためによいかと思います


    Step 5:労働契約の締結
    労働条件通知にお互いが納得したら、労働契約を結びます。この場合も、「就労ビザが取得できなかった場合又は終了資格証明書の交付がされなかった場合は、さかのぼって労働契約は締結されなかったこととする」という文言を必ず雇用契約書に入れておきましょう。


    Step 6:ビザの手続きについて
    外国人留学生を採用する場合、通常は「留学」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザに変更が必要です。その場合は、入管に「在留資格変更許可申請」を行います。


    外国人を中途採用する場合(転職)は、①転職前の仕事と転職後の仕事が同じ場合と、②転職前と転職後の仕事内容が違う場合によって手続きが異なります。
     ①の場合は、基本的にビザの手続きは必要ありません。しかし、会社が以前と同じ仕事と判断しても入管の判断とは異なることもありますので、次回の在留期間の更新時に不許可となる可能性もないとは言えません。この不安定な状態を避けるためにも、就労資格証明書交付申請を転職時に行っておくことをお勧めします
     ②の場合は、入管に在留資格変更許可申請を行う必要があります。


    Step 7:入社時の手続き
    最終ステップになります。
    ・住所を変更した場合は、市区町村役場で転入手続きと在留カードの裏側にに変更住所の記載をしてもらう (外国人)


    ・入管に「所属期間に関する届出」を行う (外国人)


    ・社会保険の加入手続き(会社)

外国人労働者に適用される法律について

外国人労働者であっても、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法等の労働法令が日本人と同様に適用されます。


したがって、外国人であるからという理由で同様の業務に従事する日本人と賃金の差を設けたり、日本人に支給する手当を外国人には支給しなかったり、福利厚生において差を設けたりすることは合理的な理由がないかぎり法律上許されません。

外国人労働者を雇用した後の手続きについて


外国人労働者の社会保険加入

外国人労働者も日本人と同様、会社が社会保険の適用事業所であり、かつ、社会保険が適用される勤務形態である場合は、入社日から当然に社会保険に加入することになります。 外国人であるからといって社会保険に加入させないことはできません。


労災保険の保険料は会社が全額を負担しますが、雇用保険・健康保険・厚生年金は会社と社員が折半し給与から控除することが可能です。その場合は、賃金控除の労使協定を結ぶか、労働者個人と賃金控除の契約を結んでください。


ご注意いただきたいのが、もし外国人社員が欠勤して、給与から社会保険料を全額控除できなかった場合であっても、会社は社員から控除できなかった額も含めて全額の保険料を納付をしなければなりません。


入退社時に「外国人雇用状況の届出」を提出

外国人を雇用した際の必要な手続きですが、「外国人雇用状況の届出」 という書類を提出すること以外は基本的に日本人を雇用した場合と同様です。


(1)雇用保険に加入している事業所は、雇い入れの場合は翌月10日まで、離職の場合は離職日の翌日から起算して10日以内に提出する必要があります。
※雇用保険被保険者資格取得届または雇用保険被保険者資格喪失届 を提出すれば「外国人雇用状況の届出」を提出したと扱われます。


(2)雇用保険に加入してない事業所は、雇入れ・離職の場合ともに翌月末日までに「外国人雇用状況の届出」を提出しなければなりません。


届出を怠ったり、虚偽の届出をした場合には、30万円以下の罰金の対象となりますのでご注意ください 。


ビザ(在留資格)の更新

ビザの更新は、原則として在留期間満了日の3ヶ月前から可能です。


「ビザの更新は会社がやらないといけないのか?」「会社が費用を負担しなければならないのか?」とよく質問を受けるのですが、本来は外国人本人がビザ申請をすべきです。


しかし、日本語があまり理解できない人もいますし、ビザに関する手続きはとても複雑なため、すべて彼らに任せた結果、申請書類の不備や過去の申請との矛盾が原因で不許可になる可能性もあります 。


そのようなことを避けるためにも、会社主導でビザの更新を行うことをお勧めします。一番安心なのはビザを専門とする行政書士に依頼をすることです。


ビザの費用についてどちらが負担するかは法律上定めはありませんので、労使双方で話し合い決めるようにしてください。